8000ドル近辺で膠着する銅の国際相場、今後の行方
自動車や電子機器など用途が広く景気の先行きを映す銅の国際相場が、年初比で約2割安いトン当たり8000ドル近辺で膠着(こうちゃく)している。4月以降の急落材料となった中国や米国の景気失速への警戒感が根強く、7月に底打ちした相場の戻りは一服した。市場は、高インフレ抑制のために利上げを急ぐ米連邦準備制度理事会(FRB)や、景気の下支えに動く中国政府の出方を注視し、米中景気の行方を見極めようとしている。
ロンドン金属取引所(LME)の銅3カ月先物は8月中旬以降、トン当たり8000ドルを挟んだ値動きが続く。7月の安値比で約15%高いが、4月の高値比では約2割安の水準で上昇が一服し、米中の景気の行方の見極めに入った。
相場を圧迫する米国の急激な利上げをめぐっては、市場見通しが分かれる。原油相場の軟化などで7月の米消費者物価はピークアウト感が出たが、人手不足で賃金上昇率は高位を保つなどインフレ圧力は継続。金利先物市場では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常比3倍の0・75%の利上げが3会合連続で実施されるとの予測と、利上げ幅は0・5%に縮小との予測が拮抗する。
目先は、国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で26日に予定のパウエルFRB議長の講演に注目が集まる。野村証券は「(9月上中旬公表の)8月の雇用統計や消費者物価といった指標をFRBは見極める必要がある」(投資情報部の神谷和男ストラテジスト)ため、9月下旬のFOMCで決める措置を強く示唆する発言はないと予測。市場不安がしばらく続く可能性がある。
銅需要の約5割を占める中国の景気も不透明感が払拭されず、相場の上値は重い。近年過熱していた不動産市場の引き締めや新型コロナウイルス感染対策の徹底に加え、水力発電シェアが大きい内陸部での猛暑と少雨による電力需給の逼迫(ひっぱく)が影を落とす。欧米景気の失速で外需不振が鮮明となるかどうかも懸念材料だ。
ただ、脱炭素対応の石炭使用制限の緩和で「2021年秋のような大規模停電は回避される」(東海東京調査センターの胡細蓮シニアストラテジスト)との見方もある。財務健全性のある不動産企業への支援や新型コロナ対応の行動規制緩和の進展で、「中国はU字型の(緩やかな)景気回復となる」(同)余地がある。
米中景気の失速懸念が緩和すれば、銅相場は底値を固める展開となりうる一方、FRBがタカ派姿勢を継続する場合や中国政府が景気コントロールを失う局面では、再び下値を探る展開も想定される。当面は米中の政策対応が焦点となりそうだ。