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論文被引用率、中国が世界1位に…日本は?

文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査で、中国の自然科学系論文の質が向上し被引用率がトップ10%と同1%論文数で米国を抜き世界1位になったことが分かった。日本の論文数は横ばいで全論文数やトップ1%論文などいずれもインドに抜かれる結果となった。日本では望ましい能力を持つ博士後期課程進学者の数について著しく不十分という認識がある。国内研究体制の立て直しが急がれる。(小寺貴之)

NISTEPが最新の科学技術指標と定点調査をまとめた。科学技術指標では研究予算や論文数などの統計をまとめている。これによると日本の研究開発費は17兆6000億円と世界3位を維持。だが論文数は全論文で4位から5位へ、トップ10%補正論文では10位から12位、トップ1%補正論文では9位から10位と、いずれも前年度調査から順位を落とした。

他国の論文が増える中、横ばいの日本は相対的に順位が下がっている。例えばインドは2010年に436校だった大学が2020年に1019校、単科大学は同2万5938校から4万2343校と急増している。全論文では4位、トップ10%補正論文では7位、トップ1%補正論文では9位に入った。NISTEPの伊神正貫科学技術予測・政策基盤調査研究センター長は「インドは若い人材が多く、今後数年かけて順位を上げてくるだろう」と指摘する。

特許出願数は日本は世界1位を維持した。2カ国以上で出願しているパテントファミリーの数は10年前から首位にあり、26%のシェアを持つ。日本の特許が引用している日本の論文は物理や材料、工学が多く、科学と技術の結びつきが強い。

定点調査は研究者のマインドを表す。若手研究者の自立・活躍のための環境整備についておおむね十分と認識が改善した。伊神センター長は「ここ数年の若手重視の政策の効果が見えてきている」と説明する。コロナ禍で進んだ研究交流や教育などにおけるリモート化については十分という認識であり、研究活動が全体としてはポジティブに変わったといえる。ただ次の世代となる博士後期課程進学者については著しく不十分との認識であり、引き続き改善が求められる。

日刊工業新聞2022年8月11日

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