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次世代通信「6G」時代へ、NICTが対応アンテナの研究開発に挑む

次世代通信「6G」時代へ、NICTが対応アンテナの研究開発に挑む

60GHz帯広帯域平面アンテナ

電波の発射、または受信にはアンテナが欠かせない。携帯電話やWi―Fiのような移動体/無線通信システムでは、アンテナは信号の出入り口、通信品質を直接左右する重要なデバイスである。一方、ミリ波の利用は第5世代通信システム(5G)で初めて実現され、次世代(6G)のシステムでは、更に高い周波数帯のテラヘルツ波が期待されている。したがって、それらのシステムに対応したミリ波・テラヘルツ波アンテナも当然必要不可欠になる。

情報通信研究機構(NICT)では、6Gを含む次世代通信システムの研究開発を進めており、殊に得意分野である高周波電波技術の開発や国際標準化に鋭意取り組んでいる。その一環としてミリ波・テラヘルツ波アンテナの研究開発も、基板材料やテラヘルツ波測定技術などの基礎的研究から、衛星通信・無線通信システムに応用できるアレーアンテナ、半導体デバイスと集積しやすい広帯域平面アンテナの開発まで、幅広く展開している。

ミリ波・テラヘルツ波アンテナは、用途や機能により、多種多様な形態を有しているが、5Gや6G用途では、高周波動作と同時に、高速通信を実現するための広い帯域性能、さらに小型・軽量・薄型などが求められている。NICTは、それらのニーズに応えられる、広帯域・高効率と一定の高利得のミリ波・テラヘルツ波アンテナ平面アンテナを長年研究開発してきた。平面アンテナには、高周波の発信源と受信機を構成する半導体デバイスとの親和性がよく、接続や一体化がしやすい特徴も併せ持つ。

NICTが提案・開発したアンテナの一例として、60ギガヘルツ帯広帯域平面アンテナを図に示す。このアンテナは面積1センチメートル角未満(厚さ0・5ミリメートル程度)、14ギガヘルツ以上の動作帯域、9dBiの最大利得、一つのアンテナで現在標準化されている世界各国のすべての60ギガヘルツ帯免許不要バンドをカバーできるといった優れた特性を持っている。同帯域では、広帯域ビームフォーミングアンテナも開発されており、それを用いた60ギガヘルツ帯高速見通し外無線通信実験も国内で初めて成功している。また、300ギガヘルツ帯では、面積数ミリメートル角のアレーアンテナが70ギガヘルツ以上の動作帯域、10dBiの最大利得が実証済みで、実際の無線通信システムに十分耐えられるテラヘルツ波平面アンテナと思われる。

ネットワーク研究所・ワイヤレスネットワーク研究センター・ワイヤレスシステム研究室 主任研究員 李可人

1991年東京大学博士課程修了後、電気通信大学助手・講師・助教授を経て、97年CRL(現NICT)に入所。光通信デバイス・マイクロ波回路・アンテナ・無線通信システムの研究に従事。工学博士。

日刊工業新聞2022年7月5日

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