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NICTが開発、通信速度の高速化と低消費電力を両立する「EOポリマー」の中身

近年、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などのデータ利活用や第5世代通信(5G)の運用が進み、大容量のデータを高速で通信し処理する需要が高まっている。データセンター内でも光通信技術を用いた光インターコネクトへの移行が進められ、通信速度を決める光変調器の更なる高速化と低消費電力化が課題となっている。

電気光学(EO)効果は、物質に電界が印加されたときに屈折率が変化する現象で、光変調器などの中で使われている現象である。

EOポリマーは、誘電率が低く、EO係数が大きいため、光変調を担う材料として、他の材料に比べ高速性、消費電力の面で優れている。

情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所の我々の研究グループでは高性能で実用性の高いEOポリマー材料開発、デバイス作製プロセス技術の開発を進めている。更に高い周波数帯でのEOポリマーの応用を考えると、テラヘルツ(テラは1兆)周波数帯(100ギガヘルツ〈ギガは10億〉―0・1テラヘルツ)での応用が考えられる。

テラヘルツ波技術は、高速無線通信、品質検査、非接触・非侵襲でのセンシング利用などの産業応用や、テラヘルツ分光計測などの学術的応用へのニーズが高まっている。EOポリマーはテラヘルツ波の発生・検出においても優れた性能を示す。光変調器などでは、与えた高周波電界により光を変調し、光通信に利用するが、テラヘルツ波検出では、光の変化から、超高周波電界であるテラヘルツ波の電界をモニターする。

我々の研究グループでは新たに、テラヘルツ波を検出する方法として、テラヘルツ波の電界によるEOポリマーの屈折率変化を利用する方法と吸収係数変化を利用する方法の二つの方法の開発を行った。EOポリマーを用いるとテラヘルツ電場の実時間波形が高精度に検出され、広帯域で検出できた。

5Gの次の世代の6Gではテラヘルツ周波数帯の利用が考えられており、高周波電界計測技術はあらゆる場面で重要になってくる。またEOポリマーは光フェーズドアレイへの応用、レーザー核融合燃焼履歴研究への応用など幅広い応用が可能で、共同研究も推進している。

EOポリマーは次世代の高周波電界計測技術に貢献するものと期待される。


◇未来ICT研究所・神戸フロンティア研究センター ナノ機能集積ICT研究室 主任研究員 山田俊樹

96年東工大有機材料工学専攻博士課程修了。九大で科学技術振興事業団研究員として3年間勤務後、99年より現職。電気光学ポリマー材料開発、テラヘルツ波検出技術に関する研究に従事。
日刊工業新聞2022年3月15日

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