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5G・6Gの重要な要素「電気と光の信号変換技術」の世界

デジタルデータの送受信は、私たちの生活に欠かせない。スマートフォンやタブレット端末でインターネットを利用する場合は、Wi―Fi(ワイファイ)や携帯電話会社の電波を介しているが、その接続先を追っていくと光ファイバーのネットワークにつながっている。結果として、無線通信と光ファイバー(有線)通信を接続する部分では、電気信号(電波)と光信号の変換が必要となる。

光変調器は電気信号を光信号に変換するデバイスで、基幹系光ファイバーネットワークなどで使用されている。一般的な強度変調器「マッハツェンダ変調器」は、入力レーザー光を2分岐し、位相差が与えられた上で干渉させ、光位相変化を光強度変化に変換する。変調器内で与えられる光位相差は入力電圧に比例するため、入力電圧を変化させると出力光強度が変化する。

シンプルな構造だが、マッハツェンダ干渉計が原理的に非線形な応答曲線を示すため、出力光信号波形は入力電圧信号波形に対してひずむ(違う形になる)欠点がある。大容量かつ低遅延の次世代ネットワークでは、必要最小限の信号処理で高品質な信号伝送が必要で、電気信号をひずみ無く光信号に変換可能な線形性の高い光変調器がキーデバイスとなる。

NICTでは、レーザー光を4分岐する多分岐干渉計の光回路を集積し、マッハツェンダ干渉計の非線形性を打ち消すような光の分岐比や位相変化量の比となる構造に設計した「高線形性光変調器」を開発した。グラフに示されるように、従来のマッハツェンダ変調器が三角関数状の応答を示すのに対してNICTの新規変調器では直線的な応答が実験にて観測され、高い線形性が示されている。新規変調デバイスを利用することで、低遅延なアナログ信号の伝送が可能となり、デジタル光通信網においては送信データ容量の最大化が可能となる。

第5世代通信(5G)や、更にその先のビヨンド5G/第6世代通信(6G)を高性能なネットワークとするために、電気と光の信号変換技術は重要な要素技術の一つであり、更なる高度化が期待されている。

ネットワーク研究所・フォトニックICT研究センター・光アクセス研究室 研究員 山口祐也

2017年早稲田大学大学院博士後期課程修了。15年早稲田大学応用物理学科助手を経て、16年NICTに入所。光エレクトロニクスの研究に従事。博士(工学)。

日刊工業新聞2022年5月10日

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