資材高騰の影響広がる、トヨタは計画達成へサプライチェーン維持力を発揮できるか
トヨタ自動車が4日発表した2023年3月期の連結業績予想(国際会計基準)は為替の円安を受け上方修正したが、営業利益見通しは据え置いた。円安効果を資材高騰などのマイナス要素が打ち消すためだ。足元で変動が続く生産は回復を見込み生産台数見通しを据え置く。ただ不透明感は強く、資材高騰の影響も広がる。計画達成は強みである仕入れ先との密接な関係に基づくサプライチェーン(供給網)維持力を発揮できるかにかかる。(名古屋・政年佐貴恵)
同日発表した22年4―6月期連結決算は、半導体や中国・上海のロックダウン(都市封鎖)に伴う部品不足などが響き、コロナ禍からの回復などで増益となったアジアを除いた全地域で販売が減少。大幅減益となった。ただ最も重いのが3150億円の営業減益要因となった資材高騰だ。影響は下期にかけて広がると見込む。主要因は調達網維持に向けた費用負担の増加だ。
トヨタ・レクサスブランドの世界生産計画は970万台を据え置き、7月以降、四半期ごとの生産台数を増やしていく計画だ。同社は「半導体のクリティカルな部分のほか、国内の要員確保にめどがついた」と説明する。
足元の生産実績は過去と比較しても堅調だ。例えば4―6月期の生産台数はコロナ禍前の15―19年の平均が223万6690台なのに対し、22年は95%の212万577台だった。さらに生産を引き上げるには部品確保のみならず、資材やエネルギー費、物流費などの高騰で大きな負担がかかる仕入れ先の正常稼働がカギになる。
トヨタは支援に着手した。仕入れ先の製品への価格転嫁を認めていなかった資材やエネルギーについても負担を決定。通期で2000億円程度の費用を積み増した。また支援策の一つである下期の価格改定見送りに伴い、通期の原価改善効果を1000億円の営業減益方向に見直した。
トヨタの利益創出力は底堅い。販売奨励金は「北米中心に前年同期よりもさらに少し低い水準で抑えられている」(トヨタ)ため、4―6月期は750億円程度の営業増益要因に。資源高騰の影響を除くと営業利益率は10%に達する。旺盛な需要を受け世界で約200万台の受注残を抱えており、車両を計画通りに供給できれば利益の押し上げ要素は十分見込める。
トヨタ幹部は「傷ついた所をきちんと手当てし、サプライチェーンの対応力を担保したい」と強調する。取り組みの成果が注目される。
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