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森林サービス産業でベンチャーが躍動している

多分野で森林空間活用、「関係人口」増加
森林サービス産業でベンチャーが躍動している

熊による被害木を活用した、桑木のキャンプ用薪「くまはぎの薪」。売り上げの一部を里山整備に使用し森の関係人口増加へつなげる

ベンチャーが、森林空間をさまざまな分野に活用する新産業「森林サービス産業」で活躍の場を広げている。地域課題の多い地方で、持続可能な地域づくりのため課題解決に取り組む。ベンチャーの持つ技術により、地域課題は地域資源になり得る。ベンチャーにとってビジネスチャンスでもあり、その活動が地方創生につながっている。(山下絵梨)

森林サービス産業とは、森林空間を健康や観光、教育などの多様な分野で活用して新産業を生み出すものとして、2019年2月に林野庁の国土緑化推進機構が提唱したもの。人口減少や高齢化社会を迎え、山村の活性化や「関係人口」拡大のために、新たな森と人との関わりの創出を目指す取り組みだ。

林業が衰退傾向となる中、残された森林作業道を活用して脱炭素化と森林整備活動を推し進めるのは、Pioneerwork(東京都台東区、後藤陽一最高経営責任者〈CEO〉)。北海道運輸局などと連携し、北海道上川町でマウンテンバイクとカーボンクレジットを組み合わせたサステナブル観光コンテンツ事業を始めた。

上川町の山林には森林の管理や木材を運び出すための道が多く存在するが、使われなければ荒れてしまい、森林の整備が行き届かない悪循環になる。そうした森林作業道をマウンテンバイクでも利用できる道として再生する。作業道が整備されれば、「これまでアクセスできなかった森の施業も可能となり、結果的に温室効果ガス吸収量増加にも寄与する」(同社)という。

桑木(石川県白山市、森田臣社長)は、熊による被害木から生まれた「くまはぎの薪」をクラウドファンディング(CF)による販売プロジェクトを実施した。くまはぎとは、熊が水分をなめるために樹皮を剥がす行為のことで、剥がされた木は腐ったり枯れたりするため、木材としての価値が大幅に下がる。本来は廃材として捨てられる被害木を、キャンプ用の薪として活用し、売り上げの一部を里山整備に使用する。薪は石川県白山市白峰地区の山で育ったスギを使用している。活動を通じて「くまはぎ被害の減少と森の関係人口の増加を目指す」(同社)ことで、新たな林業の在り方を提案する。

耕作放棄地をキャンプ場として有効活用する実証実験を始めたのはforent(茨城県つくば市、塚崎浩平社長)だ。佐賀県鹿島市と連携し、同社の遊休地活用のキャンプ場予約サイト「ExCAMP(エックスキャンプ)」を用いる。農地や森林などをキャンプ場としてサイトに掲載して集客することで、「宿泊施設からの観光周遊を促し、鹿島市全体の観光を盛り上げたい」(塚崎社長)考えだ。

日刊工業新聞2022年7月29日

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