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デザイン起点で「空質空調」に価値、パナソニックが構える事業創出施設の全容

デザイン起点で「空質空調」に価値、パナソニックが構える事業創出施設の全容

エアハブトーキョーのワークショップスペース。エアカーテンや気流を感じられる工夫が施されている

パナソニックが空質空調ソリューションの事業性検討施設「エアハブトーキョー」(東京都中央区)の活用に力を注いでいる。「デザイン起点の価値創出で企業向け事業を創る施設は珍しい」(木原岳彦空質空調社企画本部デザインセンター所長)としており、6月1日の開設から1カ月で20社、約50人が来場した。施工業者などとの協業も深めてアイデアの精度を高め、事業化する事例を増やせるかが焦点となる。(大阪・大原佑美子)

エアハブトーキョーはオフィスやビルの共用空間を安全、快適にするソリューションを顧客と試作し、改善を繰り返しながら事業性を検証する共創の場だ。こうしたソリューションでは、温度、湿度、清浄度、気流、除菌、脱臭、香りの空気質7要素を最適に制御することが求められる。

パナソニックグループは4月に事業会社制に移行。絞り込んだ領域において競争力を徹底して磨き上げる「専鋭化」を掲げている。デザイン部門としても「何を変え、何を残すのかを考えた。顧客ニーズが多様化する中我々の仕事のやり方を変える」(木原所長)狙いでエアハブトーキョーを構えた。

同施設では、空間の中に自然が溶け込み心地よい風を感じる「リブート(再起動)スペース」がコンセプトのオフィスを9月まで展示。定格風量で粒径が0・3マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の粒子に対し99・97%以上の粒子捕集率を有するHEPAフィルターで空気清浄し「感染症への感染リスクを低減できる」(木原所長)打ち合わせスペースを体感可能だ。

これまでにゼネコン、輸送関連企業などが同施設を利用。同業からの引き合いもあるという。ワークショップ(体験型講座)を進め、事業可能性の高い試作品を10月以降提案する方向だ。開設当初は年間で施主20件、施工業者20件、空間デザインなどの専門家10件程度のコラボレーションを目標としていたが「あっという間に超えそう」(同)。

感染症流行やオフィスなど空間の空気質を考え直すニーズも後押しし、同施設の必要性は高い。一方で香りに対する知見や、事業に移行する際「どこと組み、保守やソリューション提供の仕方もこれから」(同)と課題も出てきた。ユニークかつ事業性あるビジネスの創出につなげられるか注目される。

日刊工業新聞2022年7月22日

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