JVCケンウッドが強い財務体質構築へ掲げる目標
JVCケンウッドは、2024年3月期までの中期経営計画で株主資本利益率(ROE)10%以上を目標に掲げている。コロナ禍においては緊急対策として設備投資や開発費を抑制し、固定費の削減にも取り組んできた。基盤固めとともに成長の核に見込む通信型ドライブレコーダーなどの「モビリティ&テレマティクスサービス(M&T)」分野などの強化を図っている。投資原資を確保するためにも、強い財務体質の構築は不可欠だ。
営業キャッシュフローについては、22年3月期―24年3月期の3カ年の累計で700億円以上を稼ぎ出す目標を立てている。これにより財務の健全性を示すD/Eレシオ(負債資本倍率)を21年3月期の1・2から1・0以下に引き下げる計画だ。事業や資産売却を進めることで100億円を上乗せし、計800億円のキャッシュインを見込む。22年3月期は無線事業を手がける米国子会社を売却した。23年3月期以降についても、活用の見込みが薄い土地や建物の売却を進める方針だ。
800億円のキャッシュアウトのうち600億円を通常投資、200億円を成長事業や働き方改革、国連の持続可能な開発目標(SDGs)などに関する戦略投資に振り向ける計画だ。ただ「(中計に掲げる)変革と成長を進める上で、戦略投資の枠は200億円以上に増やしたい」(江口祥一郎社長)としている。
22年3月期のROEは8・1%となった。宮本昌俊代表取締役専務執行役員最高財務責任者(CFO)は「生産が戻っており、人件費や半導体などの価格高騰によるコストは増えている。値上げ対応などでコストを吸収する」と方針を語る。4月には車載用機器などに関し、3―25%の値上げに踏み切った。
持続的な成長に向け、財務戦略においては収益力、資本効率を重視して経営資源の配分を進める方針だ。ROEなどの数値目標を外部に明示することで、達成に向けた決意を示している。