事業広げるテルモ、示した新たな財務目標
テルモは2023年3月期から27年3月期までの5カ年の中期経営計画の中で、新たな財務目標を示した。5年間平均の売上高成長率を7―9%、5年で営業利益率を20%以上、投下資本利益率(ROIC)を10%以上まで引き上げる。これまで自己資本利益率(ROE)を10%以上とすることを目指してきたが、ROICを今回新たに目標に加えた。「現在、ROICは8%程度」(佐藤慎次郎社長)となっており、5年で2ポイント程度高める。今後は事業ごとに収益性を見極め、投入資源の配分にメリハリをつけていく。
ROICについて佐藤社長は「新規のM&A(合併・買収)を実施して非常に高いのれん代が入ると数字が歪む傾向があるが、だからと言って新たな買収を行わないという話にはならない」と強調する。同社はこれまで米国や主力のカテーテルを中心にM&Aを実施し、事業の拡大を実現してきた。今後は対象の地域、事業を広げることで持続的な成長につなげていく方針だ。
各カンパニーごとのROICは非開示だが「(カテーテルを展開する)心臓血管カンパニーがけん引する」(武藤直樹経営役員)とみる。開発製造受託(CDMO)を手がけるメディカルケアソリューションズカンパニーは新工場の建設を予定しており、利益に結び付くまでには時間がかかりそうだ。23年3月期から27年3月期までの営業キャッシュフローは、8000億―9000億円程度を見込んでおり、そのうち4300億―4800億円をCDMOをはじめとする設備投資に割り当てる。
同社の21年3月期の営業利益率は新型コロナウイルス感染拡大で16%に落ち込んだものの、国内同業のオリンパスの11・2%(21年3月期)、ニプロの6・1%(同期)と比べても高い。世界医療機器大手のアイルランドのメドトロニック14・9%(21年4月期)、米アボット・ラボラトリーズ19・6%(21年12月期)と肩を並べる水準だ。
佐藤社長は好調な業績を背景に「M&Aを含めた成長オプションに資金制約がかかることは当面考えにくい」とみる。次の成長に向けた投資が注視される。