コロナワクチン1瓶から7回接種可能な注射器、テルモが供給開始
テルモは、米ファイザーの新型コロナウイルスワクチン1瓶から7回接種できる「ローデッドタイプ」の注射器の供給を開始した。まず医療機関に約7万本を出荷し、医療従事者へのワクチン接種に使用された。同社は3月末に甲府工場(山梨県昭和町)で同注射器の生産を開始。製造ラインや部材の調達など生産体制を整備してきた。今後、高齢者や基礎疾患のある人などに順次、ワクチン接種が開始されることを見据え、供給拡大を見込む。2021年度に2000万本を製造する計画だ。
同注射器は針とシリンジ(注射筒)が一体となっているため、注射器の針基(はりもと)とシリンジ先端に薬液がほとんど残らない構造。注射器に残る薬液を減らしたことで同1瓶から7回の採取を実現した。針とシリンジを接続する作業も必要ないため、これまでよりも短時間で接種ができる。
金沢医科大学では4月中旬に同注射器を使用し、約2500人の医療従事者に1瓶から7回の接種を実施した。同大学病院感染制御室の飯沼由嗣(よしつぐ)室長は「針がシリンジから外れる心配がなく安心して接種できた。ワクチンを輸入に頼る日本では効率良く接種する工夫が必須」という。
ファイザーのワクチン接種をめぐっては1瓶から多く接種できる注射器の供給が課題となっている。ニプロやトップ(東京都足立区)なども月内に1瓶から7回接種できる注射器の製造を開始する予定。
日刊工業新聞2021年5月