歴史的好業績の商船三井、その要因となった事業会社とは?
2022年3月期連結決算が歴史的な好業績となった大手海運3社。その一角である商船三井は、当期利益が前期比7・9倍の7088億円と過去最高を更新した。その要因となったのは、海運3社で17年に共同出資して設立した持ち分法適用会社のコンテナ船事業会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」だ。
コロナ禍で物流網は大混乱し、それに伴い運賃が高止まりし、ONEに大きな利益をもたらした。伝統的に海運業は市況に業績が左右され、ボラティリティー(変動性)の高さが長年の経営課題だった。3社のコンテナ船事業を統合したことで規模のメリットと効率化を追求できた結果、今回の“大波”に乗ることができた。
さらに商船三井ではコンテナ船以外の海運事業でも、バラ積み船などを運航する商船三井ドライバルク(東京都港区)、液体化学品などを運ぶMOLケミカルタンカーズ(シンガポール)など、「運ぶものに応じた船種ごとのグループ会社をうまくつかっていく」(田村城太郎常務執行役員)方針だ。
一方、非海運事業では、いずれも上場していた不動産事業のダイビルと、港湾運営やプラント建設、物流事業を手がける宇徳を3月から4月にかけて相次いで完全子会社化した。海運市況に業績が左右されにくいこれらの事業を強化することで、経営の安定化を図る。さらに両社の完全子会社化は「親子上場に対する考え方の変化」(同)も背景にある。
ダイビルは東京、大阪、札幌の都心部に29棟のオフィス・商業ビルを持つほか、ベトナムなど海外にも物件を持っており、「ここ5年くらい安定して利益を出している」(同)。宇徳は総合物流企業として、商船三井グループの顧客が持つより広い物流ニーズの取り込みが期待できる。
コア事業の海運はグループ会社を活用し、非海運事業では完全子会社化を進める商船三井。グループ経営を強化し、好業績維持と経営の安定化を両立する。