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船齢10年以上は全て売却、「船舶事業でESG」を加速させるオリックスの本気度

船齢10年以上は全て売却、「船舶事業でESG」を加速させるオリックスの本気度

船舶事業は自社船の保有・運航、船舶オペレーティングリース案件の組成や投資家への販売、船舶ファイナンスの3つが柱

オリックスは船舶事業でESG(環境・社会・企業統治)の取り組みを加速させる。同社が保有する船舶のうち船齢が10年以上のものは2022年中に全て売却する。燃費性能に優れた船に入れ替えるなどして、温室効果ガスの排出量を減らしていく。併せて3月には船舶事業と航空機事業を横断する新規事業チームを新設。国連の持続可能な開発目標(SDGs)やデジタル変革(DX)などのテーマを設定して、新規事業の創出を狙う。(日下宗大)

オリックスは現在、20隻超の自社船がある。バラ積み船を得意とし、海運会社に船を貸し出して運航管理をしている。同社は年齢の高い10年以上の船について、22年に全て売却する方針だ。9月頃には自社船の船齢を平均で2―3年にする。

船舶事業を管掌する輸送機器事業本部長の徳間隆二郎執行役は「ESGにも関連することであり、資産の入れ替えは積極的に取り組みたい」と話す。足元では中古船の売却価格だけでなく、新船価格も高価になっているという。徳間執行役は「資産残高の維持ありきではない」とし、「新船購入はマーケットを見極めて取り組む」と強調する。

船舶事業の中長期的な成長に向けて、同じく輸送機器事業本部にある航空機事業と互いのノウハウや顧客、人材の“融合”を目指す。例えば船舶に投資する投資家は、航空機にも投資をしている場合もある。船舶と航空機の両事業で顧客を紹介し合えるようにする。

さらに本部長直轄の新規事業チームが3月に発足した。船舶と航空機の縦割りを排して「DXやSDGsのテーマでコラボレーションしていきたい」(徳間執行役)と意気込む。

DXについては外部の知見も活用して、1―2年後には方向性を打ち出したい考え。「SDGsやDXのかけ算は新規の投融資では不可欠になっていく」(同)と見る。

オリックスの船舶事業には三つの柱がある。一つは自社船の保有と運航。二つ目が船舶オペレーティングリース案件の組成や投資家への販売。そして、船舶ファイナンスだ。ESG関連では21年に環境負荷の低い船舶「エコシップ」を発注したり、22年には船舶ファイナンスでサステナブル・リンク・ローンの提供を開始したりしている。

日刊工業新聞 2022年6月16日

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