主力の複合機は市場縮小…事務機器メーカーはDXサービスを活路に出来るか
事務機器(OA)各社が相次いでデジタル変革(DX)関連サービスを強化している。各社が主力とする複合機は、ペーパーレス化に伴って市場が縮小傾向にある。コロナ禍を機に広がった在宅勤務もオフィスでの印刷需要の減少に追い打ちをかける。従来の複合機や消耗品の販売、保守サービスには成長を期待できない中、ITソリューションなどに軸足を置いたビジネスモデルへ転換できるか、各社の実行力が試される。(高島里沙)
リコーの山下良則社長は「デジタルサービスの会社へ改革を加速させる」と意気込む。2025年度末にデジタルサービスの売上比率を60%超に引き上げる方針だ。21年度の実績は42%で、22年度は46%を見込む。4月にはサイボウズとの業務提携を発表した。販売を手がけてきたサイボウズの業務管理クラウドサービス「キントーン」をベースに、リコー版のキントーンを両社で開発し、10月に販売を始める。
また富士通の傘下でスキャナー大手のPFU(石川県かほく市)を840億円で買収し、7月1日付で子会社化する。銀行のバックヤードにおける書類の処理や、病院での受け付け・カルテ入力などで業務フローのデジタル化につなげる。リコーは今後もDXを加速する成長投資を海外で検討している。
富士フイルムビジネスイノベーション(BI)は5月、ショートメッセージ(SMS)などのデジタルメッセージ配信サービスを手がける豪スマートメッセージングサービシーズ(メルボルン市)を買収した。プリントとデジタルを融合したマルチチャネルでのサービス提供を加速させる狙いだ。
中堅・中小企業向けのDX支援を強化するのは、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン(東京都江東区)。顧客が導入しやすいようにパッケージ化をしたDXソリューション「ブリッジ・ディーエックス・ライブラリー」を5月に発売した。まずは建設・製造業、医療機関などを対象に、20種類のサービスを提供する。
建設業向けでは、ウエアラブルカメラなどを活用した遠隔臨場で移動負荷を軽減し、検査スケジュールを効率化する。今後は公共、金融、流通などにも領域を広げ、7月には100種類を超えるDXソリューションの提供を目指す。
他方、コニカミノルタは自治体向けDXサービスに注力する。自治体DXサービスを専門とする子会社のコニカミノルタパブリテック(東京都千代田区)は、人材育成事業などを手がけるチェンジ(東京都港区)との共同出資会社「ガバメイツ」を3月に設立。DXに積極的な松山市に本社を置いた。自治体向けのDX支援プラットフォーム(基盤)を展開し、自治体の業務改革につなげる。
ただ、DX支援を掲げる企業や商材は数多い。OA各社は自社の強みや深耕したい顧客層を見極め、競争力をどれだけ高めていけるかが問われそうだ。