資金繰り支援効果は希薄化…増加に転じる企業倒産、物価上昇でさらに押し上げか
帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)が8日発表した5月の倒産件数は、TDBが前年同月比12・1%増の517件、TSRが同11・0%増の524件だった。新型コロナウイルス関連の倒産に加え、足元の急激な円安や材料高が中小企業の経営に重くのしかかる。新型コロナを受けた資金繰り支援の効果も希薄化する中、歴史的な低水準で続いた倒産件数が底打ちの様相だ。
倒産件数でTDBは1年ぶりにプラスに転じた。ただ、前年の5月は緊急事態宣言で法的整理が滞留したことによる反動増があった。これを除いた実質では1年10カ月ぶりに増えた。TSRは2カ月連続で前年同月を上回った。2カ月連続の増加は2年1カ月ぶり。
負債総額も実質的には増加しているもようだ。数値上はTDBが同52・8%減の785億4000万円、TSRが同48・1%減の873億8000万円。ただ前年同月に負債額が1000億円超の大型倒産があったことを受けた大幅減だった。
今後は物価上昇を受けた価格転嫁の遅れも懸念材料。コロナ禍の経済停滞で人手不足も顕在化し、人件費も上昇している。「企業の息切れが(倒産件数を)押し上げる」(TSR)恐れもある。
日刊工業新聞 2022年6月9日