ニュースイッチ

急増する企業の上場廃止、東証集計の14年度以降で過去最多の背景

2021年度は86社
急増する企業の上場廃止、東証集計の14年度以降で過去最多の背景

市場再編で上場維持が厳しくなり親子上場の解消が進んだ(東京証券取引所)

上場を廃止する企業が急増している。東京証券取引所によると、2021年度の上場廃止銘柄数は86社だった。東証が集計する14年度以降では過去最多となった。21年度は上場企業の倒産はなかったため倒産による上場廃止はゼロで、「完全子会社化」による上場廃止が約半分を占めた。東証市場再編やコーポレート・ガバナンスコード(企業統治指針)への対応もあり、企業再編が進む。

東証によると上場を廃止した86社のうち完全子会社化が理由の企業は最多の41社で、約半分を占めた。次いで「株式の併合」が28社、「株式等売渡請求による取得」が13社と続いた。上場親会社が上場子会社を完全子会社化し、親子上場を解消しようとする企業が増えている。市場再編で上場維持基準が厳しくなり、流通株式の時価総額や比率などに抵触する企業が多く、親子上場の解消が進んだ。

親子上場は子会社における優秀な人材の確保など仕事に対するモチベーションを上げる意味合いが強かった。

ただ、海外では珍しく、国内でも以前から親子上場の解消を促す大きな流れはあった。上場親会社の利益を優先して意思決定する場合が多く、上場子会社における少数株主の利益を犠牲にしているのではないかとの懸念もあった。また、グループ全体で長期戦略を打ち出す際、少数株主の意向に沿ったものかという点にも疑問が生じていた。

大和総研の弘中秀之主席コンサルタントは「いつまでも解消されないグレーゾーンが解消されることは、コーポレート・ガバナンス的には望ましい」と親子上場解消の流れを評価する。一方、勢いのある子会社が完全子会社になることで、特色が見えにくくなってしまうとの見方もある。

帝国データバンクによると上場企業の倒産ゼロは16年以来5年ぶり。1964年以降、87―90年、14年、16年に次いで7回目となる。上場企業の倒産はリーマン・ショックの影響が広がった08年をピークに減少傾向が続いている。20年度はレナウンやアミューズメント機器卸のNutsが倒産した。

日刊工業新聞2022年4月8日

編集部のおすすめ