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ホンダの新型「ステップワゴン」の象徴、追求した「乗り物酔い防止」の工夫

ホンダが7年ぶりに全面改良したミニバン「ステップワゴン」。「機能美を追求」(安部典明執行役常務)した新型モデルの象徴の一つが、乗り物酔い防止を意識している点だ。室内空間を水平基調でノイズが少ないデザインにするといった工夫で、視野を安定させている。他の車種と比べてミニバンは、家族での移動に多く用いられるのが特徴。快適なドライブを実現するための新たな価値として提案する。(江上佑美子)

「工夫によって乗り物酔いしにくい視界を実現している」。新型ステップワゴンについて、開発責任者を務めたホンダ四輪事業本部ものづくりセンターの蟻坂篤史シニアチーフエンジニアは胸を張る。

乗り物酔いの原因は、揺れや加速によって内耳から得る情報と目から得る情報にずれが生じることだ。脳が混乱し自律神経が乱れることで吐き気などが起こる。

新型ステップワゴンは3列の座席のうち2列目を1列目よりも40ミリメートル、3列目を90ミリメートル高くした。後部座席から前方を見やすくすることで、視覚情報を安定させる狙いだ。ヘッドレストを小さくし、背もたれの肩部をそぐことで視界を確保する工夫もした。

窓ガラスの上部と下部のラインを一直線にするなど、インテリアに水平線を多く採用。安心感を生むデザインを目指した。車体性能開発責任者である同センターの中條康治チーフエンジニアは「快適性を高めるために揺れを抑える工夫は従来からしていた。ただ乗り物酔いにここまで注目したことはなかった」と振り返る。

ホンダは国内事業において、ミニバンを軽自動車やスポーツ多目的車(SUV)、小型車と並ぶ重要車種に位置付ける。ただステップワゴンの近年の販売台数は、同じ中型ミニバンのトヨタ自動車「ノア」「ヴォクシー」、日産自動車「セレナ」やSUVに押され振るわない。デザインはシンプルにし、居心地の良さを追求する戦略で「シェアを取り戻す」(安部執行役常務)ことができるか、注目される。

日刊工業新聞2022年6月8日

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