ロボットと働く繊維メーカー、競争力の秘訣

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セーレンの繊維加工工場で稼働する、布目自動検知矯正装置「SVW8S」(手前)および統括制御装置

セーレンは車両シートをはじめとする産業資材や、ハイファッションブランド向けに染色など各種加工をした繊維製品を販売する。競争力の秘訣(ひけつ)は製造技術にあり、その一つがロボット技術を活用した布目の自動矯正だ。繊維組織中のヨコ糸が斜行や湾曲している不具合を検知し、高精度に矯正する。装置は社外にも販売し、高いシェアを持つ。(福井支局長・佐々木信雄)

一般的に布目の曲がりは、繊維自体の伸縮性や、巻き取り装置の微妙な誤差などを原因とし、不可避の現象とされる。通常、染色・仕上げ加工場では所定寸法を仕上げる熱加工ラインを備え、その投入部で布目矯正を行う。熱加工ラインは長く、50メートル程度のラインに作業員が3人程度ついて働く。

セーレンの現場では熱加工1ラインに作業員は1人だ。人をサポートして活躍するのは、ロボット技術を活用した布目自動検知矯正装置。独自アルゴリズムで情報処理し、斜行成分を矯正するロール、湾曲成分を矯正するロールを機敏に動かす。緻密な繊維の組織を見る技術が自慢だ。ほかに統括的に工程を制御する装置として仕上げ計測装置、温度管理制御装置を駆使し省力化している。

同装置は子会社のセーレン電子(福井県坂井市)が製造・販売する。売れ筋の最新機種「SVW8S」は「モアレ検知」「ズーミングスリット検知」のデュアルモード方式。平織り、綾(あや)織りなどに応じ最適な検知方式を自動選択する。

布目検知自動矯正装置は設置位置の調整のみで使える手軽さも売り(布目の曲がった生地サンプルを使った矯正の例)

セーレンで使う布目検知自動矯正装置は約50台。さらに外部への累計販売数は約5000台に上る。「マニュアル不要で動くスマート装置にした」と荒木道男セーレン電子常務は話す。設置位置の調整のみで使える手軽さも売りモノだ。

昔は複数の熟練者がつき人手のハンドル操作で矯正したが、繊維組織の複雑化や、ラインの高速化が進み、追いつかなくなった。セーレン電子の製品も現機種が第8世代だ。

布目矯正装置は、中国をはじめとするアジアの繊維産地、国内の顧客にも好評で、年に約100台を販売する。同様の機能をうたう他社製品と競合しつつ、高付加価値分野ではセーレン電子の製品がトップシェアを誇る。不良品廃棄の課題解決に役立つ点も喜ばれている。

数年前から他分野にも展開を広げる。ガラスクロス、人工血管、炭素繊維などの密度計測、また樹脂フィルムや金属箔(はく)を加工するライン上でシワ発生の検知だ。特にシワの問題は、膜厚が薄くなり、加工ラインが高速化するとともに対策に悩む現場が多くなっているという。

このほか、プリント基板用のガラスクロス、タイヤの補強材などは従来から、思わぬ不具合を起こさぬよう、シビアな布目の品質が求められる分野だ。「当社は繊維加工の技術を長年手がける。シート材料を扱う他の現場にも役立つものが多い」とセーレン電子社長を兼務する山田英幸セーレン社長。新分野の展開に手応えを示す。

日刊工業新聞 2022年4月5日

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