感染拡大響いたGDPマイナス、専門家はこう見る!
内閣府が発表した2022年1―3月期の国内総生産(GDP、速報値)は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0・2%減、年率換算1・0%減となり、2四半期ぶりにマイナスとなった。内需の柱でGDPの過半を占める民間最終消費支出は前期比0・03%減。新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大でまん延防止等重点措置が各地域で適用されるなど、旅行や外食などのサービス消費が低迷した。
もう一つの内需の柱である民間企業設備は、同0・5%増で2四半期連続のプラスだった。汎用機械や研究開発投資が伸びた。政府最終消費支出は新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、同0・6%増と2四半期ぶりのプラスとなった。
財貨・サービスの輸入は同3・4%増で、新型コロナウイルスワクチンなど医薬品や携帯電話の輸入が増えた。財貨・サービスの輸出は自動車などが伸び、同1・1%増となった。
実質GDPの寄与度でみると、国内需要(内需)はプラス0・2%となったものの、輸出から輸入を引いた財貨・サービスの純輸出(外需)はマイナス0・4%だった。
山際大志郎経済再生担当相は同日会見し、「過去の感染拡大時には内需寄与が大幅にマイナスであったが、1―3月期は内需寄与はプラスとなった。経済社会活動を極力継続できるように取り組んできたことが表れた」と述べた。
同時に発表した2021年度の実質GDPは前年度比2・1%増となり、3年ぶりのプラス成長になった。コロナ禍で同4・5%減と大きく落ち込んだ前年度からの反動でプラスに転じたものの、政府経済見通しの同2・6%増を下回った。
山際経済再生担当相は今後の見通しについて、「ウクライナ情勢による不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約による下振れリスクに十分注意する必要がある」としている。
私はこう見る
4-6月は個人消費改善進む/大和総研エコノミスト・小林若葉氏
1―3月期は個人消費が想定よりも落ち込まなかった。新型コロナウイルスの感染拡大により旅行や外食への支出が減ったものの、近場での娯楽を楽しむ傾向が消費を下支えした。自動車などの耐久財が減少したのは減産の影響だ。設備投資は小幅な伸びで、機械設備への投資が増えている。企業がデジタル変革(DX)や環境対応を求められていることも背景にある。
4―6月期は高めのプラス成長に転じるとみている。新型コロナの感染がこれまでよりも落ち着くことで個人消費の改善が見込まれる。旅行の意欲を喚起する政府の施策が実施されれば、消費の押し上げにつながる。一方、中国が感染対策として続けている都市部のロックダウンや半導体不足に伴う自動車産業への影響が懸念される。欧州経済が下振れするリスクも残る。(談)
資源高と円安で下振れ/日本総合研究所研究員・白石尚之氏
マイナス成長は想定内だ。オミクロン型の新型コロナウイルスの拡大に伴って、まん延防止等重点措置が適用され、経済の停滞感が強まったが、個人消費の下振れは軽微だった。景気の底割れは回避したとみている。
設備投資は増加しており、投資意欲は底堅い。一方、経営環境はロシアのウクライナ侵攻で不透明感が増している。エネルギー価格の上昇による影響も、4―6月期に表れてくる。
エネルギーや食料品の値上がりが消費者の購買力を下押しする可能性があるが、コロナ禍の自粛ムードにより貯蓄が増え、物価上昇の耐久力がついている。4―6月期に個人消費が回復し、プラス成長を見込む。ただ資源価格の上昇と円安により景気が下振れすることが考えられる。中国の「ゼロコロナ」政策が続くと供給網の停滞が起こる。(談)