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資源高でも物価指標「GDPデフレーター」が下がるワケ

政府が15日に発表した2021年10―12月期の国内総生産(GDP)は、物価影響を除いた実質で前期比1・3%増、年率換算で同5・4%増と2四半期ぶりのプラス成長となった。ただ、足元では新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染が急拡大し、1月以降の成長率は大幅な鈍化が予想される。欧米や中国がコロナ前のGDP水準を上回っている中で、日本経済は回復力の鈍さが目立っている。

GDPの半分以上を占める個人消費が前期比2・7%増と持ち直し、成長に寄与した。緊急事態宣言が21年9月末に解除され、外食や旅行などのサービスが同3・5%増と消費を押し上げた。半導体不足などによる生産制約の影響が緩和した自動車の販売増も追い風となり、耐久財は同9・7%増となった。

設備投資は同0・4%増と前期のマイナスから増加に転じた。輸出は半導体製造装置や建設機械がけん引し同1・0%増、輸入は医薬品の減少などにより同0・3%減で、差し引きはプラスだった。

10―12月期年率換算のGDPは541兆3879億円で、コロナ前の19年10―12月期水準に0・2%不足まで迫った。だが足元は景気減速の懸念が強まっている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、1―3月期GDP成長率を「マイナス成長のリスクもある」と指摘する。

最大の下振れ要因がオミクロン株拡大による個人消費への影響だ。まん延防止等重点措置が3月6日まで延長され、個人消費は「好調だった昨年10―12月期の水準を超えるのは難しい」(小林主席研究員)とみられる。また、トヨタ自動車が部品仕入れ不足などで1月の減産規模を増やすなど、自動車の生産調整が続いており、消費下押しの懸念がある。

さらにエネルギー高騰などに起因する物価高が消費心理を冷やす。ウクライナ情勢緊張など、地政学リスクもエネルギー価格高騰に拍車をかけそうだ。

内閣府の試算では家計に積み上がった貯蓄は40兆円に上り、消費を後押しすると期待される。ただ、物価高の進行が「いわゆるリベンジ消費に水を差す可能性がある」(同)。

金融政策も懸念材料だ。欧米は金融引き締めに転じており、金利上昇は景気拡大のブレーキになりうる。海外が減速すれば、輸出停滞などで日本経済も打撃を受ける。

山際大志郎経済再生担当相は「経済社会活動をいかに平常化するかが重要。そのために経済対策を実行していく」と述べた。日本経済は感染対策との両立と、景気下振れリスクへの対処という難題に直面している。

日刊工業新聞2022年2月16日
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
記事に「エネルギー高騰などに起因する物価高が消費心理を冷やす」とあるが、物価動向を示すGDPデフレーターは今回、前年同期比1.3%低下とマイナス幅が拡大している。どういうことなのか?当たり前だが、名目>実質の場合は物価が上昇、名目<実質の場合は物価が下落していることを意味する。例えば名目+3%、実質+2%なら物価は1%上昇、逆に名目+2%、実質+3%なら物価は1%下落していることになる。GDPデフレーターはこの名目と実質の差異から見た物価動向であり、名目GDP/実質GDPで算出する。支出面から見たGDPは消費+投資+政府支出+輸出-輸入で構成される。ここでポイントとなるのが輸入だ。現在、資源価格高騰などの影響で輸入が大きく増加している。すると定義式から分子の名目GDPはその分減少する。一方、分母の実質GDPは価格変動の影響は取り除かれているので変わらず、結果としてGDPデフレーターは低下する。ただ、輸入価格の上昇が国内価格に転嫁されれば、分子の消費や投資はその分だけ増加するので相殺され、結局、分子は変わらずGDPデフレーターは不変となる。つまり、今回GDPデフレーターが低下したということは、価格転嫁が進んでいないことを意味する。GDPデフレーターはホームメイドインフレ(国内に起因するインフレ)の指標と呼ばれている。前述したように、輸入価格の上昇分が転嫁されても、GDPデフレーターは変化しない。GDPデフレーターが安定的に上昇するには国内に起因する価格上昇が不可欠で、それがない限り、仮に消費者物価指数の前年比が日銀が目標として掲げる2%を超えたとしても、デフレから脱却したとは言えない。

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