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航空機ジェットエンジンのNOx排出低減へ、JAXAが研究する燃焼振動の予兆検知の仕組み

環境保全の観点から、航空機のジェットエンジンから排出される窒素酸化物(NOx)の排出基準が定められており、NOx排出量低減技術が必要とされている。

NOx排出量を低減するために最も有望なのは希薄予混合燃焼方式を用いることであるが、この方式は燃焼が不安定になりやすく、燃焼器内に大きな圧力変動(燃焼振動)が発生することがある。燃焼振動は、燃焼器やその他の部品を破損したり、寿命の低下を招いたりするため、発生を防止しなければならない。その一つの方法として、燃焼振動の発生する運転条件をあらかじめ特定し、この運転条件を避けて運用することが行われる。

燃焼振動の発生する運転条件は、エンジンの個体差や経年変化、天候などの外部要因によっても変化するため、これらを考慮した余裕を含めて設定する必要がある。燃焼振動特性と低NOx性などの燃焼器性能が相反する場合には、この余裕を広くとると燃焼器の持っている性能を十分に生かせなくなり、逆に余裕が十分ではないと運用中に燃焼振動が発生する可能性が高くなる。

この問題に対処するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、燃焼振動の予兆を検知する技術の研究を行っている。これは、利用可能な運転条件の範囲をあらかじめ設定したものに固定するのではなく、燃焼振動の予兆を示す指標をリアルタイムで取得し、予兆を検知した時に燃料流量配分などの運転条件にフィードバックすることで、燃焼振動の発生を防止するための技術である。

JAXAが保有する高温高圧燃焼試験設備において実機に近い条件で燃焼試験を行い、圧力変動などを計測している。取得した圧力変動の時系列信号から、統計やカオス理論、機械学習などを組み合わせた方法を用いて燃焼振動の予兆を示す指標を算出する。この算出方法については東京理科大学と共同研究を行っており、これまでにいくつかの方法を提案してきた。これらの方法により、燃焼振動の予兆を検知可能であることを確認している。

現在はまだ検知の信頼性が十分ではなく、信頼性の向上が実用化に向けた課題である。また、航空輸送においても脱炭素化が進められており、カーボンニュートラルな燃料を用いた燃焼器への適用範囲の拡大も必要である。これらの技術開発を通じて、少しでも環境保全に貢献できればと考えている。

航空技術部門 航空環境適合イノベーションハブ 主任研究開発員 吉田征二
 99年航空宇宙技術研究所(現JAXA航空技術部門)に入所。以来、ジェットエンジン燃焼器に関する研究に従事。コアエンジン技術実証(En-Core)プロジェクトチームでの超低NOxリーンバーン燃焼器の研究開発を兼務。

日刊工業新聞2022年4月4日

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