半導体はフル稼働、自動車には足かせ…GW工場カレンダーの実態
コロナ禍で3回目となるゴールデンウイーク(GW)が始まる。新型コロナウイルス感染症対策のまん延防止等重点措置はすべての地域で解除されたが、一部地域で「第7波入り」のリスクが顕在化するなど“非日常”は続く。こうした中、製造業のGWは、おおむね例年通りの“日常”を取り戻しつつあるようだ。各業界の工場のカレンダーをのぞいてみた。
【半導体】連休中も休まずフル稼働
半導体が不足する状況は依然として続いており、国内の半導体工場の多くがGW中も休まずフル稼働を続ける予定だ。
キオクシアはNAND型フラッシュメモリーの堅調な需要を受けて、GW中も四日市工場(三重県四日市市)と北上工場(岩手県北上市)を例年通り24時間稼働する。もともと「高価な設備をフル稼働させる目的で365日24時間稼働している」といい、通常通りの稼働が続く。
ソニーグループは子会社のソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(熊本県菊陽町)が熊本県、長崎県、大分県、鹿児島県、山形県、宮城県の工場でイメージセンサーなどの生産ラインを、一部のメンテナンスなどを除き例年通り24時間稼働する。
三菱電機はパワー半導体製品の生産を担うパワーデバイス製作所の各工場が、GWの全日程で稼働する。前工程は4月に量産を始めた福山事業所(広島県福山市)と熊本事業所(熊本県合志市)、後工程はパワーデバイス製作所(福岡市西区)がそれぞれ全生産ラインを稼働する。
ルネサスエレクトロニクスは前工程の那珂工場(茨城県ひたちなか市)など5工場を、後工程は一部の法令点検による停止を除いて米沢工場(山形県米沢市)など3工場を全日フル稼働する。
東芝デバイス&ストレージ(川崎市幸区)は、パワー半導体などを製造する加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)が24時間フル稼働する。一方、アナログ半導体やマイコンなどを製造するジャパンセミコンダクター岩手工場(岩手県北上市)は29日から5月4日まで法定点検のため6日間稼働を停止し、同大分工場(大分市)が29―30日の2日間、メンテナンスのために稼働を停止する。
【機械】10連休企業多数 受注規模、例年通り
重工業大手は受注規模がおおむね例年通りとなっており、5月2、6日を休日にし、29日から5月8日まで10連休にする企業が多い。
三菱重工業は2、6日は計画年休付与日とする。新型コロナウイルス感染拡大防止の措置ではなく、例年通りの対応だ。川崎重工業、IHI、住友重機械工業も有給休暇の取得奨励などで原則10連休にする。2、6日に単発で稼働してもエネルギー効率が上がらないという事情もある。
三井E&Sホールディングス(HD)は6日に各工場、7日に年間休日数調整のため一部工場を稼働する。
建機大手では、コマツは29日は稼働するが、30日―5月8日まで工場を休む。対して日立建機は29日、5月5、6日は稼働させる。国内需要が旺盛なのに加え、注力市場の米国向けに在庫を積み増すようだ。コベルコ建機と住友建機は29日から5月8日までの10連休。従業員に長期休暇を取らせる方針で21年と同様だ。
【自動車】部品不足が生産の足かせ
自動車業界は部品不足が生産の足かせとなる状況が続く。半導体不足の長期化や中国・上海でのロックダウン(都市封鎖)、ウクライナ情勢悪化による物流の混乱といった複数の要因が絡んでおり視界は晴れない。ただGW期間については、おおむね例年通りだ。
トヨタ自動車など乗用車メーカー7社といすゞ自動車など商用車メーカー3社は30日から5月8日までの9日間、工場を休業する。ダイハツ工業は滋賀第2工場(滋賀県竜王町)のみ、半導体不足と上海のロックダウンの影響で5月9、10日の稼働も停止する。
三菱自動車は29日から5月8日まで工場の稼働を停止する。ただ水島製作所(岡山県倉敷市)では軽自動車の電気自動車(EV)量産を控えており、停止期間中に関連設備の工事を予定している。
小糸製作所やリケンなどのサプライヤーも30日から5月8日まで操業を止める。タイヤ大手は、住友ゴム工業は29日―5月1、3―6、8日、横浜ゴムは29日から5月5日まで休業。ブリヂストンは「製品の需給バランスを踏まえて決める」方針だ。
GW後も半導体不足問題は続く。トヨタは5月9―28日に、国内9工場10ラインで最大6日間の稼働停止日を設ける。
【鉄鋼】影響注視で生産対応
鉄鋼業界では操業を続ける企業が少なくない。鋼材の内需は製造業、建設業とも底堅いが、半導体不足やサプライチェーン(供給網)混乱による自動車生産の動向、ウクライナ情勢などの影響を注視しながら生産する。
高炉は一度火を入れると昼夜、休日を問わず動かし続ける。日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所とも連休中も通常通り1日3交代勤務。JFEスチールは設備点検や補修なども進める。
電炉を使うメーカーは稼働計画に柔軟性を持たせられる。生産量に応じた休止も容易だ。ただ同じ企業でも拠点により手がける品種が違い、GW中の稼働にバラつきがある。東京製鉄は宇都宮市、愛知県田原市、岡山県倉敷市などの各工場で状況は異なるが「全社的にはフル操業とはいえず、生産量は例年並みを保つ」(総務部)。
JFE条鋼は連休中、顧客の製品引き取りがないため各製造所とも一定の休止日を設け、工事などに当てている。
【ビール】需要コロナ前の5割 生産体制に余裕
ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)の需要は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止等重点措置の全面解除で飲食店での酒類提供制限がなくなり、前年比では伸びているものの、コロナ禍前の19年比では5割程度とみられる。このためビール大手の生産体制には余裕がある。
キリンビールは年初に年間稼働計画を立てている。国内にある9工場のうち、主力の取手工場(茨城県取手市)では25―30日、5月2―5日に稼働し、5月1、6、7、8日は休日となる予定だ。
アサヒビールの国内にある8工場は、基本的には暦通りの稼働となる。ただ、各工場でGW期間中1日ずつ、生産調整のため稼働日を設けている。稼働日に生産するかどうかは、需給をみながら各工場で判断する。
サッポロビールは夏季の需要期に備え、GW期間中も工場ごとに休日と稼働日を組み合わせ生産量を確保している。