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水素化反応30倍以上に加速、東大が成功した意義

東京大学の宮村浩之助教と小林修教授は、金属ナノ粒子などの固体触媒と溶液に溶けるルイス酸触媒を組み合わせることで、水素化反応を30倍以上加速させることに成功した。固体表面と溶液中の触媒の協調効果で反応が加速する。1気圧で40度―50度Cという温和な条件で芳香族化合物を水素化できた。従来は高温高圧が必要な反応であり、化学品合成の環境負荷を減らせる。

ロジウム白金合金のナノ粒子とスカンジウムトリフラートなどのルイス酸を触媒として用いる。まず液相中で芳香族化合物がルイス酸触媒と複合体を作り、これがナノ粒子表面で活性化されて水素と反応する。オルトキシレンの水素化反応ではロジウム白金合金ナノ粒子のみの場合に比べて、ルイス酸触媒を加えると反応速度が30倍以上向上した。

複雑な分子構造の芳香族化合物の水素化にも成功。従来は高温や50気圧などの高圧条件が必要だった。精密有機合成に加えて、水素キャリアの水素化、脱水素化プロセスにも提案する。化合物を水素化する反応条件を温和にできると装置の負荷を抑えられる。

日刊工業新聞 2022年4月18日

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