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3期連続赤字の楽天グループ、財務改善のカギは?

3期連続赤字の楽天グループ、財務改善のカギは?

「楽天新春カンファレンス2022」三木谷浩史会長兼社長の基調講演(同社公式サイトより)

楽天グループは基地局建設など携帯通信事業への投資がかさみ、財務状況が悪化している。2021年12月期連結決算(国際会計基準)は当期損益が1338億円の赤字で、過去最大の赤字だった。当期赤字は19年同期から3期連続。資金確保と自己資本比率の改善に向け、第三者割当増資や永久劣後債といった資本性資金の調達を進めている。

米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは21年、楽天グループの長期発行体格付けを投機的水準となる「ダブルBプラス」に引き下げた。基地局投資が重荷となっているほか、顧客獲得が遅れていることも理由に挙げた。

楽天グループは同年、日本郵政や中国IT大手のテンセント子会社などを引受先とする総額2423億円の第三者割当増資を実施。また、資本に組み入れられる外貨建て永久劣後債約3000億円を発行した。これら資金調達の多様化により、携帯通信事業参入により悪化していた自己資本比率は前期の5・0%から21年12月期は6・6%に改善した。だがKDDIが45・2%(21年3月期)、NTTが32・9%(同)、ソフトバンクは12・4%(同)と他の通信大手と比べると見劣りする。

財務基盤の改善には携帯通信事業の成長が焦点となる。2月に第4世代通信(4G)の人口カバー率が96%に到達した。基地局整備の進捗(しんちょく)によりKDDIから回線を借りる「ローミング」費用を縮小し、「22年第2四半期以降の収益改善を見込む」と三木谷浩史会長兼社長は述べる。また、「基地局投資は23年12月期以降に定常状態となる」と広瀬研二副社長執行役員最高財務責任者(CFO)は説明。

自己資本当期利益率(ROE)で見るとソフトバンクの39・1%、KDDIの14・2%、NTTの11・0%に対し、楽天グループはマイナス15・7%と稼ぐ力が弱い。まずは携帯通信事業の収益力を高め、自己資本比率も23年12月期以降のさらなる改善に結びつける狙いだ。

日刊工業新聞2022年3月10日

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