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海をDX!「深海域で高速海中光ワイヤレス通信」に初成功した技術の仕組み

海をDX!「深海域で高速海中光ワイヤレス通信」に初成功した技術の仕組み

光ワイヤレス通信技術に使用する受信機(左)と送信機

海のデジタル変革(DX)へ―。トリマティス(千葉県市川市、島田雄史社長)は海洋研究開発機構(JAMSTEC)と、水深900メートルで100メートルの距離を毎秒1ギガビット(ギガは10億)の速度で光ワイヤレス通信する技術を開発した。相模湾の実証実験で確認しており、実際の深海域で高速海中光ワイヤレス通信に成功したのは初めてという。海底ケーブルや音波で通信できない地点で使用でき、海中ロボットの運用などで実用化を目指す。(千葉・八家宏太)

海中光ワイヤレス通信はトリマティスが2017年から開発してきた「LiDAR(ライダー)」の技術をもとに研究し、通信に使用する送信機と受信機を開発した。耐圧深度は1000メートル。水中での通信精度をJAMSTECの水槽や多目的プールで確認し、相模湾で実証を行った。

送信機には窒素ガリウム系レーザーダイオード(GaN―LD)5個を使用し、光の高出力化とマルチビームを可能にして、水中で光線が不安定化する課題を解決。効果的に光を拡散する。受信機にはフォトマルチプライヤーチューブ(PMT)を4個搭載して、多チャンネル化して深海での受光を可能にした。

「東京湾など海域に応じたシステム構築をする」(島田社長)ため、海中の環境に応じて青や緑、黄など光の色を変化させて海域の水中環境に対応して通信できる。毎秒1ギガビットの速度で通信できるため大容量の情報の送受信も可能だ。

従来、海中での通信は音波と海底ケーブルが主流。だが、通信距離に限界があり、海中の環境に影響されやすく送受信可能な情報量が限られているのが課題だった。

島田社長は海中光ワイヤレス通信技術について「日本は海洋国で、水中環境のデジタル化は必要。この技術は将来的に海のWi―Fi(ワイファイ)の基礎になる技術だ」とし、水質調査や水中の設備点検で海中ロボットを運用する際に必要な通信として実用化に向け開発を進める方針。

日刊工業新聞2022年4月8日

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