中小企業に“二つの危機”、東京都が支援へあの手この手
感染再拡大の懸念が高まる新型コロナと先が見通せないウクライナ情勢―。二つの危機にビジネスを直撃されている中小企業を支える東京都の施策が相次ぎスタートする。裏付けとなる2022年度予算も成立し、事態の長期化を見据えながら金融・経営の両面から対策に万全を期す構えだ。(編集委員・神崎明子)
まずは喫緊の課題である資金繰りでは、「ウクライナ情勢対応緊急融資」を6月末までの緊急支援として実施する。ウクライナ情勢を発端に事業活動に影響を受けている都内中小企業に低利で融資する。
一方、コロナ禍の長期化や実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済本格化を見据えた施策も講じる。これまでに都が実施した「感染症対応」や「危機対応」といった制度融資からの借り換えを希望する中小企業が対象で、既存の融資残高に今後の事業に必要な資金を加えた額を1・5%以内から2・4%以内で融資することで、当面の返済負担を軽減する。信用保証料も8000万円までは全額、8000万円を超える場合は4分の3を補助する。
ウクライナ情勢の影響で、原材料価格の高騰や仕入れ先確保に直面する中小企業を支えるため、中小企業団体を通じた助成事業も始める。原材料の共同購入などで必要となる倉庫の借り上げや仕入れ先を開拓するための商談会の実施費用などの一部を助成するもので、4月1日から募集を開始した。
ロシアによるウクライナ侵攻で世界中でサイバー攻撃への脅威が高まっていることを受け、中小企業の対応強化も後押しする。専用の特別相談窓口を3月末に開設したの続き、サイバーセキュリティー機器やサービスの導入支援も「準備ができ次第始める」(産業労働局)予定だ。世界で猛威を振るうコンピューターウイルス「エモテット」による感染事例は都内中小企業でも報告されていることから、こうした情報発信を強化する。
一方、収束の兆しがいまだ見えないコロナ禍。新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加に転じる傾向はアジアや欧州ですでに顕著だが、東京でも現実のものとなりつつある。行動規制の撤廃・緩和やオミクロン型の派生型「BA.2」の感染拡大が背景にあるとみられる。このため、都がこれまで実施してきた企業や飲食店、運送事業者向け支援の多くは6月末まで延長されることとなった。
このほかテレワークや有給の特別休暇制度の導入など就業規定の整備を進める中小企業に奨励金を支給する事業の申請受け付けも9月末までの延長が決まった。
政府が月末までに策定する追加経済対策とともに、中小企業の経営基盤を下支える効果が期待される。