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悪化する中小企業の景況感、ウクライナ侵攻でさらに冷え込みか

中小企業の景況感が一段と悪化している。日銀が4月1日に発表する3月の企業短期経済観測調査(短観)について、主要シンクタンク5機関は中小企業(全産業)の足元の業況判断指数(DI)をマイナス7―マイナス12と予測し、前回の2021年12月調査のマイナス3から大幅に悪化すると見立てる。大企業(全産業)も前回調査のプラス14からプラス8程度に引き下がる。ウクライナ情勢の悪化が長期化すれば、中小・大企業ともに景況感が一段と冷え込むのは避けられない。

業況判断DIは、景況感が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」回答割合を差し引いた数値。3月調査の中小企業(全産業)の同DIについて、三菱総合研究所はマイナス12、ニッセイ基礎研究所はマイナス10と、前回調査のマイナス3から大幅に悪化すると予測。日本総合研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、みずほリサーチ&テクノロジーズはマイナス7との予測で、前回調査より4ポイント悪化する。

大企業の同DIについては、5機関の平均でプラス8、前回調査より6ポイント悪化するとみる。

3月短観の調査期間中は、オミクロン株の感染拡大に伴い、まん延防止等重点措置による行動制約が個人消費を停滞させたほか、ロシアのウクライナ侵攻による原油・原材料価格の高騰、部品の供給制約などが企業の景況感を悪化させた。

先行きについては、まん延防止等重点措置の全面解除に伴う行動規制の緩和により、サービス消費などの回復が見込まれるものの、ウクライナ情勢の悪化が長期化すれば世界経済に及ぼす影響への懸念から、企業経営者のマインドはさらに萎縮する。加えて日米の金利差拡大を背景に円安・ドル高の基調にあり、円安の一段の進行により原油・原材料の輸入コストがさらに上昇すれば企業業績の大きな足かせになる。

緊迫化するウクライナ情勢の先行きは視界不良だが、政府はエネルギー対策を軸とした追加経済対策を講じる方針で、資源価格の高騰緩和や中小企業の資金繰り支援などを強化する。3月末までの時限措置として講じている石油元売り会社への補助金給付について、4月以降も継続することなどを検討する。

経済産業省はすでにウクライナ情勢の変化に伴う中小・小規模事業者対策を打ち出し、全国に特別相談窓口を設置しているほか、日本政策金融公庫などによるセーフティネット貸付の要件も緩和している。減収などの数値要件を満たさなくても、原油高で資金繰りに支障をきたしている中小企業を支援する。

ウクライナ情勢の悪化が収束するまで、企業は政府支援策を活用しつつ耐性をどこまで維持できるかが今後の焦点になる。

日刊工業新聞2022年3月29日

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