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自動車業界の変革支える拠点に…企業はなぜ「横浜」に移転するのか

自動車業界の変革支える拠点に…企業はなぜ「横浜」に移転するのか

24年に完成予定のボッシュの研究開発施設のイメージ図。日本法人の本社も同施設に移転する

自動車やその関連業界で横浜市に本社を移転したり、研究開発施設を新設したりする動きが相次いでいる。独ボッシュの日本法人(東京都渋谷区)は2024年に本社を横浜市に移転する。新社屋を建設して、近郊に分散していた研究拠点も集約する。いすゞ自動車は5月をめどに本社を東京都内から横浜市に移す。最近は自動車の電装化を支える電子部品メーカーも研究開発拠点を置くなど、横浜市は自動車業界の変革期を支える拠点となりつつある。(日下宗大)

ボッシュは横浜市都筑区に新しい研究開発施設を建設する。新社屋は地上7階、地下2階で、延べ床面積は5万3000平方メートルを計画する。24年9月に完成し、同年末までに周辺8拠点にある研究開発機能の集約や日本法人本社を移転する。

「未来のモビリティを実現するには事業部を横断した知識の共有が重要だ」。ボッシュ日本法人のクラウス・メーダー社長は2月の会見で本社移転と新社屋を設置する意義をこう話した。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応で開発工程が複雑になる分、事業部同士の連携が競争力向上のカギとなる。

コロナ禍でリモートで仕事をするスタイルが普及したとはいえ、やはり物理的に近い距離で仕事をする方が良い場合がある。メーダー社長は「対面でのコミュニケーションは従業員間の協力を促進し、クリエーティブな思考を高めると確信している」と強調する。

帝国データバンクが21年5月に発表した調査によると、20年の神奈川県への本社移転数は241社で全国で東京都に次ぐ2位だった。また31年連続で県内転入が県外転出を上回る。帝国データバンク横浜支店の担当者によると「アクセスの良さといった利便性や、東京よりも賃料が高くない点」が評価されるという。

特に大手企業の移転先として人気なのが横浜・みなとみらい地区だ。いすゞは5月をめどに本社を東京都品川区から同地区の横濱ゲートタワー(横浜市西区)に移転する。いすゞは神奈川県藤沢市に主力工場を置く。モノづくりの現場と近くなることで、業務効率化を図る。

同地区には日産自動車が09年に本社を東京都中央区から移した。こちらも主力工場や研究開発拠点が神奈川県内に集まっていることが本社移転の背景の一つにあった。

電子部品メーカーでは京セラが19年に、村田製作所が20年に同地区で研究開発施設を構えた。電装化で電子部品の役割が広がっている。自動車関連の事業拡大などを念頭に、開発力を底上げする狙いだ。

ボッシュのメーダー社長は「横浜はテクノロジーの場所で、自動車の世界でも中心だ」と語る。次世代車の開発競争が激化するなか、関連企業が集積する横浜が技術革新を生み出す場になることが期待される。

日刊工業新聞 2022年3月16日

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