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中小企業4万社が事業再構築に挑戦へ。支援する中小企業庁の手応え

「事業再構築補助金」創設1年

経済産業省・中小企業庁が中小企業の事業再構築を支援する「事業再構築補助金」の創設から3月末で1年を迎える。現在までに全国約2万6000者を採択。地元産の食材を活用した食料品の開発・販売に業態転換したレストランや電動車向け部品事業に進出するエンジン部品メーカーなど事例が出始めている。今春以降は公募要件を大幅に緩和し、成長を目指す多くの中小に活用を促す。(下氏香菜子)

2月中旬に第5回公募の申請受け付けを始める。第1回から5回公募までの採択者数は計4万社超に達する見通し。公表済みの第3回公募までの応募・採択状況を見ると「製造業」「宿泊業・飲食サービス業」「卸売・小売り業」が多く、同3業種で全体の5―6割を占める。平均倍率は2・4倍だった。

1件当たりの補助額が最大1億円と高額である一方、倍率が高すぎないため「多くの企業が『挑戦してみよう』と思える制度になっているのではないか」と企業庁の担当者は分析する。

すでに業態転換や新分野展開の事例が出始めている。ノースコーポレーション(さいたま市浦和区)は、埼玉県内に経営するイタリアンレストランの1店舗を地元産の食材を使った食料品を開発・販売する拠点に転換した。プロのシェフが手がける付加価値の高い総菜などを販売し新たな需要を創出するとともに、地元で食材を生産する生産者との連携を通じて、地域活性化に貢献する考えだ。

エンジン部品を手がけるベンダ工業(広島県呉市)は、ハイブリッド(HV)車向けの部品事業に進出する。自動車メーカー各社が電動車の開発を加速する中、同社はエンジン向けの製品比率が高い課題を抱えていた。補助金を活用してHVに搭載されるモーター向けの部品を量産する体制を整備する。財務基盤の強化も進め、変化に強い企業への成長を目指す。

同補助金は業態転換や新分野展開に利用されるため、採択企業は従来取引のないプレーヤーとの関係構築が求められる。このため採択企業だけでなく、事業再構築に関連する地域や企業など多様なステークホルダー(利害関係者)に新たな商機をもたらす効果が生じている。

企業庁の幹部は「全国数万社が事業再構築に挑戦する状況を生み出せた意義は大きい」と強調する。事業再構築を進める“モデル企業”の影響を受け、各地で自主的に業態転換や新分野に挑戦する企業が増えることも期待しているという。

今春予定する第6回公募以降は、公募要件を大幅に緩和する。脱炭素に貢献する事業に挑戦する企業向けの新枠「グリーン成長枠」を設け、同枠については新型コロナウイルス感染症による売上高減少要件を撤廃する。21年度補正予算で約6100億円を確保しており、第6回を含めて計3回程度公募する予定。

要件緩和により新型コロナで経営に打撃を受けた企業だけでなく、成長意欲のある多くの中小が利用できるようになる。事業環境の変化を見通し、新分野に活路を求める中小を強力に支援する。

日刊工業新聞2022年2月10日

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