京都の中小企業が公設試験場と開発した独自ロボットの実力
ツー・ナイン・ジャパン(京都市南区、二九規長社長)は、人手による作業をロボットに置き換え、錠剤製造用の杵・臼の生産能力を現状比3倍以上に引き上げる計画を進める。2021年5月開設の第一工場(京都府南丹市)では、材料投入や磨き工程などをロボットが担う。ロボット導入では比較的コストがかかるティーチングなどの工程が障壁となる。同社は公設試験場と協力して乗り越えた。(京都・大原佑美子)
ツー・ナイン・ジャパンは、本社と川崎市の生産拠点、京都市のR&Dセンター機能を集約し、杵・臼を効率的に量産する第一工場を21年に稼働した。
杵・臼の原料である鋼材の加工装置への投入、杵軸の研磨、臼の中軸・外側の研磨など、繰り返し作業で人が付きっきりで担う工程の自動化を進めている。省力化により生まれた時間を社員の技術力向上のための講習、さらなる効率化に向けたアイデア考案、金型寸法測定などの工程などに振り向けたい意向だ。
同社の杵・臼は離型性と耐久性が高いのが特徴。加工工程の一つである「磨き」では、装置回転速度や加える力、加工時間など従来職人の経験に頼ってきた。これを自動化すれば生産効率が上がる。しかしロボットメーカーにティーチングから安全柵設置まで一括で依頼すると、ロボット1台当たりで導入費用が1000万円程度はかかってしまう。
そこで「地元金融機関の支援を受けたほか、京都市産業技術研究所(産技研)など公的機関のノウハウを活用させてもらった」(二九社長)。これにより課題を解決した。
具体的には産技研と杵・臼の磨き工程を担うオリジナルのロボットシステム計4台を共同開発した。導入費用は、ロボットメーカーに依頼した場合に比べ総額で半分程度に抑えられたという。
二九社長は今回の事例を「職人の技術、金融機関と産技研のノウハウを掛け合わせるロールモデルができた」と位置付ける。優れた技術を有するにもかかわらず、働き手や資金面の不安で技術伝承ができない中小企業などに「公設試を上手に活用してほしい。今回の事例がモデルになれば」と話す。
新型コロナウイルス感染症の治療薬開発や、健康志向の高まりを背景に、世界中で医薬品やサプリメントの需要は拡大している。それを取り込むべく同社は、第一工場近隣の用地約1476平方メートルを取得し、23年5月に第二工場を稼働する計画だ。
第一工場で進める臼・杵加工工程の効率改善が進み、生産能力が向上すると熱処理設備が不足する。そこで第二工場に同設備を追加導入し、目標に掲げる生産能力の現状比3倍以上を早期に整えたい考えだ。
同社は今後も公設試などとの協業で自動化を推進する。増員はせずに、品質を確保しつつ生産能力向上を実現できれば「『週休3日制』が制度化された場合でも対応できる」と森田直樹執行役員・マネージャーは話す。新たな働き方にも前向きに取り組む方針だ。