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旭化成新社長が繊維事業で経験した喜びと悲しみ

旭化成新社長が繊維事業で経験した喜びと悲しみ

小堀社長(左)と工藤次期社長 

旭化成は、4月1日付で工藤幸四郎取締役常務執行役員(62)が社長に昇格する人事を公表した。小堀秀毅社長(66)は代表権のある会長に就く。4月の新中期経営計画スタートを機に経営体制を刷新し、事業のポートフォリオ変革と新事業創出を加速する。

28日に開いたオンライン会見で、工藤氏は「ポートフォリオ変革は待ったなし。経験を踏まえ、強いリーダーシップで当たりたい」と意気込みを語った。

工藤氏は入社以来、繊維畑を歩み、グローバル展開や事業縮小の厳しい決断など、さまざまな経験を積んだ。

21年から経営企画を担当し、22年度から始まる中期経営計画の策定に携わった。小堀社長は「(工藤氏は)この1年、旭化成の目指す姿を描き、中計策定を担った。先見性や構想力など総合的に新たな100年を担える」と選任理由を語った。

世界的な脱炭素化の流れの中、次期社長には、環境対策への投資を拡大しながら、持続可能な社会に見合う事業構成への変革が求められる。グリーン水素製造技術などの環境関連を中心に新事業を立ち上げ、そのための投資配分のメリハリもポイントとなる。

工藤氏は「リスクを取り、成長戦略につなげることが重要だ。リスクを取るのは事業戦略だけでなく、従業員一人ひとりが成長意欲を持ち、一歩も二歩も踏み出すこと」とし、全社員に奮起を促す。マテリアルと住宅、ヘルスケアの3領域で事業を展開する多様性を強みに、次の100年へ踏み出す。

【略歴】工藤幸四郎氏(くどう・こうしろう)82年(昭57)慶大法卒、同年旭化成工業(現旭化成)入社。16年上席執行役員、19年常務執行役員、21年取締役常務執行役員。宮崎県出身。

素顔/旭化成社長に就任する工藤幸四郎氏 自由闊達・光る行動力

旭化成の発祥の地である宮崎県延岡市出身。幼い頃から同社になじみが深く、たくさんの通勤自転車が工場へ向かう様子をよく覚えているという。「延岡だけでなく工場群に愛着があり、責任の重大さを感じている。発展を担いたい」と語る。

ポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)の海外生産拡大やポリエステル事業の撤退など、喜びも悲しみも繊維事業で経験した。米工場の閉鎖を伝えた際、現地の女性社長が涙を浮かべつつ「その話をしに来たあなたの方が辛かっただろう」と言われ感極まった。「あらためて事業をやるのは人だと思った」。

人柄は明るく、行動力がある。「仲間づくりが得意」とは小堀社長の評価だ。多様性や明るさ、自由闊達(かったつ)さを生かした新たなリーダーシップが期待される。(梶原洵子)


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日刊工業新聞社2022年1月31日

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