ESG資金呼び込みの試金石「かながわSDGsアクションファンド」とは?
企業・個人が地元企業にインパクト投資
ミュージックセキュリティーズ(東京都港区、小松真実社長)は神奈川県と協定を結び、課題解決に挑む企業を個人や地元企業が資金支援できるファンドを展開している。企業は地域からの応援を受け、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を実践できる。ファンドは幅広い層からESG(環境・社会・企業統治)資金を呼び込んでSDGs活動を後押しする試金石として注目される。
ミュージックセキュリティーズが県との協定に基づき「かながわSDGsアクションファンド」(SDGsファンド)を立ち上げた。現在、ケイ・システム(神奈川県大和市)の「ゴミの見える化革命DX」、女子サッカークラブを運営する大和シルフィード(同)の「働く女性のための健康推進応援」のファンド2本が募集中だ。一口3万2400円なので個人も出資できる。
ケイ・システムなど2社は「かながわSDGsパートナー制度」の登録企業だ。県はSDGs推進企業を増やそうと19年に制度を創設し、これまでに審査を通過した502社・団体を登録している。さらに県はSDGs活動を評価する指針も策定している。県SDGs推進担当課の湊治子課長は「指針を投融資に活用し、登録企業の活動を後押したい」と協定の狙いを語る。
ミュージックセキュリティーズはインターネットを活用するクラウドファンディングを生かし、幅広い層から資金を集める知見を持つ。同社の渡部泰地取締役は「ESG資金を地域課題解決に向かわせ、計画を動かす」と意気込む。課題解決の事業を着想しながらも資金不足で計画を前進できない企業を支援する方針だ。
立ち上げたSDGsファンドは、経済的リターンと社会への効果も生み出す「社会インパクト投資」となっている。ケイ・システムのファンドはリサイクル率65%以上を効果の目標として設定した。進捗(しんちょく)を報告するので出資者は資金が社会貢献に使われたことを定量的に確認できる。
効果を達成すると配当が減るのもポイントだ。ケイ・システムは配当の支払いが減った分、事業成長に投資する余力が生まれる。ミュージックセキュリティーズの山辺紘太郎取締役は「配当が減っても事業に共感した方に応援してほしい」と語る。
現状のESG投資は上場企業が対象となっている。社会インパクト投資も1件の投資額が1億円を超えており、地域の小規模な事業だと“サイズ”が合わない。このギャップを埋めるのがSDGsファンドだ。ミュージックセキュリティーズは地元企業からの出資も期待している。少額出資なので投資判断しやすく、社会インパクト投資なので地域課題解決に貢献した実績を客観的にPRできる。
神奈川県に限らず、SDGs推進企業の登録制度を持つ自治体が増えている。次のステップとして登録企業による課題解決の実践が求められる。また、ESG資金の呼び込みも課題だ。SDGsファンドが地域から資金を集めて企業の実践を後押しする仕組みとして機能すると、他の自治体のモデルになる。