積水ハウスが住宅部材の生産ラインに導入したAIの効果
積水ハウスは生産ラインのエネルギー供給量の最適化や、工場内の人やフォークリフトの配置の効率化に人工知能(AI)の導入を進めている。受注が好調な3、4階建ての住宅部材の生産性を向上させ、住宅の拡販へつなげる。
3、4階建ての重量鉄骨「フレキシブルβシステム」の構法に必要な梁などを製造する山口工場(山口市)では、生産ラインのエリアごとに最適なエアの流量を予測するAIを2019年から導入している。エア供給機器の電力を導入前に比べ33・4%削減することに成功した。
AI導入に先駆けてまず取り組んだのは、IoT(モノのインターネット)による生産工程の“見える化”だ。穴開けや切断などの加工から塗装、組み立てに至る生産工程に、独自で開発したIoTセンサーを導入。各工程の稼働状況と、エア供給状況をモニターで把握できる仕組みを構築した。
そして、リアルタイムで収集したデータを基にAIで最適なエアの必要流量を算出し、エア供給の自動制御を効率化するシステムを開発した。
生産工程にAIを取り入れる理由には、1棟ごとに自由設計で建てる「邸別生産」を特徴としていることが挙げられる。特に、自由な間取りで大空間を実現するには梁が要となるが、邸別ごとに長さなどの規格が異なる。梁を効率よく生産するためには「確立されたシステムのみでは限界があり、人が判断して指示、操作する場面が多い」(生産調達本部企画グループ谷口勝章部長)状態だった。
そのため、その日の生産計画などに基づき、人によって配管のバルブ開閉や供給機器(コンプレッサー)の起動停止を調整する必要があった。一方、「作業員によってエアの調整が左右され、エネルギー消費に無駄が生じていた」(同)ことが課題だった。AIの活用で、人によって異なる判断や指示を標準化することで、エネルギー消費の大幅削減へつなげた。
22年からは、人やフォークリフトの配置の判断にもAIの活用を目指している。作業員には位置情報が分かるタグを付け、人の位置情報と生産工程の稼働状況などのデータを基に、AIが生産ラインの生産性や作業終了時刻を予測。生産性向上のボトルネックとなっている工程に、自動で人の支援を要請するシステムを開発している。
フォークリフトでは車載器からの位置情報や運搬工程の状況を踏まえて、AIがリフトの選択や指示の順序を提示し、運搬指示を自動化するためのシステムを構築する予定だ。(大阪・池知恵)