トヨタの超小型EVに詰め込んだ「ミニ四駆構想」、テスラ・中国勢に対抗なるか
トヨタ自動車が超小型電気自動車(EV)「C+pod(シーポッド)」を使い、EVの新たな工法や素材開発に挑んでいる。背景にあるのは「規格化して改造しやすい」というシーポッドのコンセプト。EVメーカーの米テスラや安価な中国勢などによるEV開発競争が激化する中、柔軟な発想で技術の可能性を探る。(名古屋・永原尚大)
「アッパーボディーの乗せ替えが可能で、自由自在な車づくりができる」。目を輝かせて語るのは、トヨタ有志で組織する技術者集団「TNCP」の技術者だ。テスラが実現した車両骨格を一体成型する技術に対抗し、アルミニウムの鋳造と押出部品で骨格を作り上げた。約200あった部品点数を9点に抑え、従来より17%軽量にした。剛性はほぼ同じという。今後、オープンカーやトラック仕様など着せ替えできるシーポッドとして実証を重ねる。
風車付きの専用駐車場に止め、プロペラの動力で後輪を回し充電するアイデアも形にした。ホームセンターなどの市販品で製作した。風速毎秒4メートルの場所で12時間充電すると、約13・5キロメートル走行できる。電力インフラ不要で、被災地や電気が通っていない地域でもEVを利用できる。
一方、木製シーポッドを披露したのは、TNCPとは別の技術者有志団体「トヨタ技術会」。樹脂製のボディー外板を外し、木粉・米粉・水を8対11対10の割合で混ぜた素材に張り替えた。この素材をプレス成形すると電動ドリルでも穴が開かない硬さになるという。将来、実用化されれば国内の木材活用に貢献するモビリティーになりそうだ。
シーポッドは他の車両と比べて改造しやすい特徴を持つ。技術者は「新技術の実証がしやすい」と口をそろえる。その背景には、電池の規格などを全て公開し、利用者はさまざまな部品を組み合わせてEVを作れるという基盤構想がある。自分だけのミニ四駆を作るようなイメージだ。
2021年末に一般販売が始まったシーポッド。小さなボディーに詰め込んだこの「ミニ四駆構想」が、テスラや低価格路線で躍進する中国勢に対抗できるEVの誕生に結びつくか、注目される。