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トヨタが全面改良したミニバン、新技術採用で突き詰めた「王道」

トヨタが全面改良したミニバン、新技術採用で突き詰めた「王道」

トヨタが全面改良した新型ミニバン「ノア」。渋滞時の運転支援システムなども導入

広さ・走り両立 使いやすく

トヨタ自動車は、ミニバン「ノア」「ヴォクシー」を全面改良し発売した。プラットフォーム(車台)を刷新し新世代ハイブリッドシステムを初搭載したほか、渋滞時の運転支援システムなどのトヨタブランドでは初となる新技術をふんだんに採用。一方バックドアの開閉などに“からくり”技術を応用し、コストを抑える工夫も盛り込んだ。スポーツ多目的車(SUV)など競合が広がる中、「広くて使いやすい」というミニバンの王道を突き詰めた。

新型ノア、ヴォクシーの特徴の一つ目は、広くて使い勝手の良い車室空間を維持しながら走行性能を高めた点だ。ハイブリッド車(HV)で採用した「第5世代トヨタハイブリッドシステム」は、従来比でモーターを15%、電池を30%小型化しながら出力はそれぞれ16%、15%向上。加速性能などを高めながら燃費は23%引き上げた。リチウムイオン電池はパナソニックとの共同出資子会社、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ製で、設立後初の開発品となる。

二つ目の特徴は、ユーザーからの要望が高かった先進技術の充実だ。歩行者検知など最新の安全運転支援システムを採用。加えて高速道での渋滞時にステアリングから手を離して運転できる機能や、スマートフォンの専用アプリケーション(応用ソフト)を通じて遠隔操作で自動駐車する機能など「トヨタブランド初」の先進技術を複数採用した。

ただファミリー向けブランドなだけに、トヨタ車体の水澗英紀取締役は「いかに安く選んでもらえる価格にするかが非常に重要」と強調する。コストを抑えながら利便性を高めるカギが、トヨタのお得意技でもある「からくり技術」だ。モーターを使わずにスライドドアと連携して出てくる格納式昇降台や、押さえるだけで望みの位置で止まるバックドアを実現した。

消費税込みの価格はノアが267万―389万円、ヴォクシーが309万―396万円で、販売目標はそれぞれ月8100台、5400台に設定する。トヨタ車体の富士松工場とトヨタ元町工場で生産する。2車種の合計で約3万1500台の先行受注があるという。

トヨタ車体、企画―生産一貫 開発効率向上

今回の新型車両はトヨタからトヨタ車体へバン事業が移管されてからの初製品だ。企画から開発、生産までを一貫して車体が手がけ、開発効率向上といった成果を上げた。水澗取締役は「絶対に失敗できないプロジェクトで、やれることを全部やった」と、多様な新技術を採用した背景を明かしつつ「日本の顧客に最も使いやすいミニバンを追求した」と力を込める。

ノア、ヴォクシーを取り巻く競争環境は厳しくなっている。競合としてSUVが存在感を高めている。またミニバン分野ではユーザーの高級志向が顕著になっており、同分野では中級に位置付けられるノア、ヴォクシーには逆風だ。ただ両者は合計で年10万台以上の販売を維持し、トヨタの国内販売の8―9%を占める主力だ。今回の全面改良で好調な販売を維持し、さらに存在感を高められるか注目される。

日刊工業新聞2022年1月14日

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