スシローがドバイ万博日本館に出店中!CEOが明かす海外戦略の全容
人気回転寿司チェーン店の「スシロー」が、ドバイ万博日本館のレストランとして、中東に期間限定で初出店した。イスラム教徒が多く住む国ゆえに食材の制約が多いなか、回転寿司がグローバルで人気となるための手応えを掴んでいる。スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES 代表取締役社長CEOの水留浩一氏、同海外事業部ドバイ国際博覧会プロジェクトマネージャーの谷口義裕氏に話を聞いた。
イスラム教徒にも楽しめる寿司を
—ドバイ万博日本館レストランとして出店した経緯を教えください。
水留 日本で生まれた「スシロー」ブランドを世界中の方々に知っていただくうえで、万博は格好の場であると思い、出店を決めました。また、寿司は日本が誇る食文化であり、日本館レストランで提供することは、我々にとって非常に価値があると考えたのです。
-出店に際し、苦労したことはありますか。
水留 スシローがこれまで踏み込んだことのない土地に、寿司を運ぶ「回転レーン」と注文メニューをスピーディーに届ける「Auto Waiter」(オートウェイター)という専用レーン、そして効率の良い店舗運営をするためのITを持ち込んだことです。また、現地のハラル基準をクリアしつつ、スシローの味を再現したことが何よりも大きいですね。苦労というより、これらの課題を乗り越えるために、膨大なエネルギーやさまざまなリソースを投じたことがとても挑戦的でした。
谷口 ドバイ万博の店舗では、初めて寿司を食べた方にも好評でした。「この値段でこんなに美味しいものが食べられるのか」というお褒めの言葉をいただいたことが、嬉しかったですね。特に生サーモンが一番人気で、ロール寿司やまぐろも好評です。また、サイドメニューのラーメンやうどんをオーダーする方が非常に多く、皆さん寿司を食べた後に麺をすするという感じです。
—ドバイの店舗ではまぐろ2貫で19AED(約600円)と国内店舗の価格より高価ですが、もともと物価が高いドバイではリーズナブルな価格設定です。
水留 当社が出店する際は、10年~20年先を見据えて投資し、その期間内で回収します。しかし、ドバイ万博で投じた設備や人件費を開催期間中に回収しようとしたら、寿司の値段はとんでもないことになります。トータルのコストでは赤字ですが、仮にドバイに本格出店した場合に続けていける価格設定にして、お客様には価格も含めてスシローを体験いただけるようにしました。
谷口 お客様には店内を楽しんでいただいており、Auto Waiterを動画で撮っている方も多いですね。また、現地スタッフはお客様の来店時に必ず「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と日本語で挨拶します。こうした挨拶に対して反応は良く、店内に飾ってある大漁旗や、スシローの公式キャラクター「だっこずし」に興味を持たれる方もいらっしゃいます。「ここにいると、まるで日本に来たみたいだ」と感想を伺うこともあります。
—ドバイの店舗スタッフはどのような構成ですか。
谷口 ドバイの店舗は日本から派遣された43人に、アラビア語で案内できる数人の現地スタッフが加わり運営しています。スタッフは英語が堪能ですが、注文や会計の仕組がドバイの人たちにとっては独特。その説明の仕方をOJTで学んでもらい、現場の接客で実践します。
水留 日本から派遣するスタッフは、正社員、アルバイトなどの混合チームです。ドバイでの経験が、将来海外出店する時の店舗運営など、個人の希望する様々な形に生かされることを期待しています。
持続型で、命につながる「食」を提案
—ドバイへの出店を機にさらなるグローバル展開を目指しているのでしょうか。
水留 ドバイ万博日本館のレストランで評価をいただいていることで、世界中で展開できると実感しました。ですが、まずはアジア地域での足場を強固にしていきたいと考えています。特に中国大陸にはまだ2店舗しかありませんが、人口や経済成長をみてもポテンシャルはまだまだあります。今後、中国全域に展開する計画です。
—2025年には大阪・関西万博が開催されます。在阪企業として、そこにかける想いは。
水留 1970年の大阪万博では「元禄寿司」が出店し、回転寿司の存在を世界にアピールしました。そしてドバイ万博では、世界の人たちに現在の回転寿司の姿を見ていただいている。当社としても2025年大阪・関西万博では、食にまつわる何らかの表現をできたらと考えています。未来に必要なのは、ただ浪費するだけではない持続可能な「食」であり、命をもっと意識した形での「食」です。これは大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」にもつながります。それを具現化する方法は、現段階では未定ですが、楽しみにしていただきたいですね。