コロナで採算悪化したゼネコンたち、「今年が底」は本当か
旺盛な建設需要をけん引した東京五輪・パラリンピック関連施設や大型再開発事業が落ち着いた反動、新型コロナウイルスの影響により、ゼネコン各社は採算が悪化した。幸いにも作業現場ではコロナ対策が進み、すでに受注した豊富な手持ち工事が順調に進み売上高は増加基調にある。
だが、利益面ではコロナ禍で海外からの建材などの調達遅れ、金属製品の価格高騰などが響き、各社の利益を押し下げた。ある準大手ゼネコン首脳は「工事に想定外の見直しが必要となり、工期を守るために工事を急いだことで人件費などの負担が増えた」と話す。
またコロナが企業の投資計画に影響を及ぼしたため、「発注や計画の延期や中止が発生している」(大手ゼネコン首脳)という。このため好調な電子商取引(EC)や通販向け物流倉庫、データセンター、半導体関連施設の建設で受注競争が激化。不採算に陥る受注案件も出始め、2021年4―9月期の決算会見で大手ゼネコン首脳から「行き過ぎた競争はやめるべきだ」という意見も飛び出した。さらに物流コストの上昇につながる原油価格の不安定さも懸念材料になっている。
ただ、今後はコロナの影響が徐々に縮小し市場の回復が見込まれるとの見方もある。コロナ禍で様子見だった首都圏の大型再開発事業やホテル、商業施設が動きだす見通し。他の大手ゼネコン首脳からは「建設市場は今年が底で来年は回復し、受注競争も落ち着く」とみる。建設業界は年度計画の後半に追加工事などで利益が増加する傾向もある。
業界団体の日本建設業連合会がまとめた21年度上期(4―9月)の建設工事受注は、前年同期比13・4%増の6兆2230億円と回復の兆しがある。日建連は「民間企業からの大型出件が続く」と分析する。
国内土木もトンネル工事の事故の影響などで工期遅れなどが発生して採算がやや悪化したが、国土強靱(きょうじん)化の進展で官公庁からの受注は堅調だ。