請負業を脱皮して「総合インフラサービス」に、前田建設の勝ち残り策
前田建設工業が経営体制を刷新する。10月1日、同社とグループ会社の前田道路、前田製作所の3社を傘下とする共同持ち株会社「インフロニア・ホールディングス(HD)」が設立、東証1部に上場する。「請負業中心の建設業から脱皮し、『総合インフラサービス企業』へビジネスモデルの転換が狙い」(前田建設の前田操治社長)で、再編機運が高まるゼネコン業界において勝ち残りを目指す。
建設業界を取り巻く環境は厳しさを増しており、将来的にも少子高齢化で民間の請負業務の減少が見込まれる。成長市場の海外も商習慣の違いや政情が不安定で積極的には進出できない状況が続いている。
一方で、老朽化したインフラの維持管理・更新が増加するなか、地方自治体の財源不足により、PPP(官民連携)などの市場は拡大すると見込まれている。前田建設は新体制のもと、3社が有する建設請負事業のノウハウを最大限に生かし、インフラ運営におけるワンストップのマネージメント事業を強化していく。
HD社長には前田建設の岐部一誠取締役専務執行役員を起用し、会長は前田社長が就任する。実効性ある統治(ガバナンス)体制の構築とデジタル変革(DX)の推進で生産性向上を図り、高収益体制を構築し長期安定経営を目指す。また、HDの執行役に就任予定の坂口伸也前田建設執行役員は、グループ体制を強化するため「業種にこだわらずにグローバル企業ともM&A(合併・買収)を展開する」と意欲的だ。
前田建設による前田道路へのTOB(株式公開買い付け)は前田道路の経営陣に独立の理念が強く「敵対的TOB」となったが、最終的にTOBが成立、20年3月に連結子会社化した。「道路が最もインフラ整備でボリュームが大きい。前田道路の舗装・維持管理のノウハウが不可欠だった」(坂口執行役員)と説明する。ただ、円滑なグループ経営の構築と新型コロナウイルス感染症による社会の急変も感じ、独自性を残す「共同持ち株会社の形態になった」(前田社長)という。
事業会社の強化とM&A戦略による不足する事業領域の補強が、グループ全体を強化できるかのカギとなる。