激化する宇宙開発、日本は世界トップレベルの「打ち上げ技術」生かせるか
各国の宇宙開発が激化し、月や火星などの探査への動きが活発化している。2021年は、日本でも宇宙利用や有人宇宙探査への動きが多く見られた。特に宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の野口聡一さんと星出彰彦さんの国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在は話題になった。日本人宇宙飛行士が続けてISSに滞在することは珍しく、野口さんは「日本の宇宙開発への貢献が世界から認められた証だ」と振り返った。
野口さんと星出さんは50歳を超えており、日本人宇宙飛行士は高齢化が進んでいる。若手人材を増やすためJAXAは日本人宇宙飛行士の新規募集を始める。学歴や専門分野を問わず、短大や高等専門学校の卒業生、文系出身者にも受験資格を与えた。今後の月探査などで活躍する人材を確保する。
宇宙旅行の実現に向けた動きも活発化している。米スペースXなどが宇宙船に民間人を乗せて宇宙旅行の試験を進めている。ロシアではISSへの宇宙旅行も可能であり、衣料品通販運営会社「ZOZO」創業者の前沢友作氏らがISSに向けて約12日間の宇宙旅行に出かけた。ただ宇宙旅行の旅費は1人数十億円とされており、誰でも気軽に宇宙へは行けない。一方、宇宙船の離着陸地である「宇宙港(スペースポート)」の建設に向けた動きが大分県や北海道で進んでいる。宇宙船の打ち上げ機会の増加とともに宇宙旅行が身近になると見込める。
日本の宇宙開発は打ち上げ機会の少なさから世界から遅れている技術も多いが、打ち上げ技術の高さは世界トップレベルだ。さらなる打ち上げ技術の向上を目指しJAXAや三菱重工業は、開発中の大型基幹ロケット「H3」の打ち上げを21年度中に行う予定だ。また同機の後継機を「再使用型」として開発を進め、30年にも初号機を打ち上げる見込み。世界の宇宙開発は加速し続ける中で、産学官が連携して日本独自の技術開発を進めることが重要だろう。