【ディープテックを追え】GITAIの「労働ロボット」が遂に宇宙へ!

#16 GITAI Japan

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2021年8月29日、国際宇宙ステーション(ISS)の補給を目的に米スペースⅩのロケット「SpaceX CRS-23」が飛び立った。そこに一つの実証用ロボットが積み込まれた。GITAI Japan(ギタイ、東京都大田区)が開発する太陽光パネルの組み立て作業を行うロボットだ。宇宙開発が加速する中、人間に代わって過酷な労働を代替する“壮大な”事業について聞いた。

人間の労働を代替

ギタイは宇宙飛行士の仕事を代替するロボットを開発する。宇宙船内のケーブルを刺す作業や太陽光パネルの組み立てなどを代替し、宇宙空間での人件費削減に挑む。

中ノ瀬翔社長は「宇宙で人間が働くと1時間当たり500万円ほど費用がかかる上、長くても2年ほどしか滞在できない」と現状を指摘する。これまでも宇宙用ロボットはあったが、一つの作業を確実にこなす単純なロボットだった。宇宙開発が加速する中、ギタイでは様々な作業を人間の代わりに行いたいというニーズを取り込む考えだ。第一歩として、冒頭のロボットで太陽光パネル組み立て作業の実証をISSで行う。今回の実証は自律式のロボットを用いるが、「今後は(今回とは違う作業を)半自律や地上からの遠隔操作でも実証を行いたい」と話す。

同社が実証する太陽光パネル組み立てロボット

宇宙旅行を手がける米ヴァージン・ギャラクティックや米ブルーオリジン、イーロンマスク氏率いる米スペースXなど宇宙への輸送を安価に、容易にする企業が多く生まれている。中ノ瀬社長は「彼らが安価な輸送を実現し、我々が安価な労働力を実現する」と展望を語る。

月面での利用を狙う

また、月での事業も見据える。アメリカが中心になり月面着陸を目指す「アルテミス計画」など、月への関心が強まっている。今後は月を探索するため、長期での滞在も予想される。ギタイは月面用のロボットローバーを開発。3次元地図の作成やドリルによる採掘、サンプリング作業などの地上実証に成功しており、25年中の月面実証を目指して開発を続け、月での作業ニーズを取り込む。

ギタイが開発した月面用のロボットローバー

ギタイの元々の強みは、環境が厳しい宇宙でも安定した通信を実現する技術だ。例えば、画質を落とさずに8.3ギガピーピーエスのデータを6メガピーピーエスまでサイズダウンし、地球上に送ることが可能だ。トレードオフの関係にあった画質低下の防止とデータ遅延の防止の両立を実現しており、そこにロボット技術を加えることで、宇宙空間で様々な事業を模索する。

統制力に強み

ロボットチームを率いるのは、二足歩行ロボットで有名だったシャフト創業者の中西雄飛ロボット開発責任者(CRO)。シャフト解散後、一時は引退も決意したが、中ノ瀬社長の熱意で同社に参画した。中西CROは「ここまでの技術者が揃った集団はいない」と自社の技術に自信を見せる。ロボットアームや制御ソフトだけではなく、極力、部品も自社で製造する垂直統合にこだわる。

ロボット技術を担当する中西CRO(左)と中ノ瀬社長

同社の強みについて「技術の統制力」を挙げる。要素技術が優れていても最終製品の性能が高まらなければ、顧客の課題を解決できないからだ。中ノ瀬社長は「スペースXのように本質的な課題を解決すれば、要素技術の凄さは語られなくなる。我々もそこを目指したい」と将来像を語る。

また、ロボットで培った制御技術を使い、商用衛星向けサービスも打ち出す構えだ。近年、通信衛星として打ち上げられる小規模な商用衛星の打ち上げが進んでいる。だが、機能を停止した衛星が「宇宙ゴミ」として浮遊する問題が生じている。これらの宇宙ゴミが増加すれば、稼働している衛星に衝突する事故が起こる可能性も指摘されている。同社はロボット技術で培ったアーム制御技術を応用して、ゴミを掴んで除去するサービスを視野に入れる。

気象や放送衛星として利用される静止衛星の寿命を延長するサービス展開も目指している。静止衛星の寿命は10年から15年といわれる。燃料を充填することで、寿命を延長し、衛星打ち上げよりも費用の低減を訴求していく。

ロボット活用が各所で叫ばれながら、産業用以外では中々進んでいない。コストの関係上、人間の労働力を完全に代替することが困難なためだ。「人間との競合になると、どうしてもコストの勝負になる」とし、「高付加価値かつ1点ものの業界こそロボットがビジネスになる」と話す。故に宇宙はぴったりの環境だ。一度、夢破れた中西CROも「このビジョンならロボットを作り続けられる」と語る。将来、地球と宇宙が“ご近所”になった時、我々を豊かにするのはギタイのロボットかもしれない。

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COMMENT

小林健人
デジタルメディア局DX編集部
記者

中西CROが取材中、「ロボット“も”作っている会社ではなく、ロボット“を”作っている会社が好きなんですよ」とおっしゃっていたのが印象的でした。情熱と愛情、計画性のある人やチームでなければ、この壮大な計画の一翼を担うことはできないのだろうと感じました。世界でもなかなか競争相手がいない事業ですし、今後どんなロボットが宇宙に行くのか、今から楽しみです。

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