経営危機に陥った“マシニングセンターの名門”、日本電産傘下で「ぬるま湯体質」脱却なるか
不適切会計から経営危機
OKKが日本電産の傘下に入る。創業100年を超える中小型マシニングセンター(MC)の名門企業は不適切会計処理などに端を発した経営危機で、日本電産による救済型買収に追い込まれた。日本電産は18日、第三者割当増資を引き受け、子会社化すると発表。買収額は約54億円で出資比率は66・65%となり、2022年1月末をめどに買収を完了する。近年は海外展開の遅れで、世界的な工作機械の需要拡大の波にも乗れず業績が低迷していたOKKだが、今後は日本電産の支援を受け活路を見いだす。
OKKのMCは自動車部品加工などで存在感を示しており、最近では半導体製造装置向けでも受注を伸ばしている。ただ名門故に旧態依然とした経営で業績は伸び悩んできたのも事実。縦割りの組織体制が残り、重切削に力を入れてきたMCも高性能ながら他社と差別化できる特徴を出し切れなかった。さらにだめ押しとなったのが、過去の不適切会計の発覚。上場廃止の瀬戸際まで追い詰められ、市場の信頼も失った。
一方、日本電産はプレス機械の日本電産シンポに加え、8月には三菱重工工作機械(現日本電産マシンツール)を買収するなど工作機械事業の拡大に乗り出していた。M&A(合併・買収)に積極的な日本電産だが、過去の事例では歴史や技術力を有しながら業績が低迷する企業の立て直しを得意としており、OKKはその両方の条件に合致。日本電産から買収を持ちかけた。
OKKは19年3月期に264億円だった売上高が21年3月期に120億円に落ち込み、当期損益が24億円の赤字だった。業績回復を目指す22年3月期も当期損失11億円を見込んでいる。11月10日には不適切会計の責任を取って浜辺義男前社長が辞任した後を森本佳秀社長が受け、経営の立て直しを進めている。ただ森本社長自らが「ぬるま湯体質」と認めるように、経営の立て直しには構造改革だけでなく、昔ながらの企業文化の一掃も必要となっていた。
OKKは今回の増資を、本社(兵庫県伊丹市)内にある部品加工工場と組み立て工場の建て替えや、不適切会計処理の一因となった基幹システムへの投資などに充てる。さらに日本電産傘下に入ることで「安定した経営基盤を構築し、成長を加速していくことが可能になる」(森本社長)。加えてグローバルネットワークを通じた販路の拡大、日本電産マシンツールが持つ大型機械のラインアップとの相乗効果なども期待できる。
ただ市場の最大の期待は「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」に象徴される、日本電産の永守重信会長の“永守イズム”にありそうだ。