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開幕近づく「COP26」、注目は潮流生み出す“場外戦”!?

国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が31日、英グラスゴーで幕を開ける。温室効果ガス排出量の実質ゼロを目標に掲げる「パリ協定」の運用ルールづくりが主要議題だが、本来の交渉以外の会議にも注目が集まる。過去のCOPで“場外”での出来事が交渉を左右した経緯があるからだ。(編集委員・松木喬)

30、31日、イタリアで主要20カ国・地域首脳会合(G20サミット)が開かれる。COP26の“前哨戦”となるG20に参加する首脳宛てに対し、世界600社が削減目標強化を求める書簡を送った。

この書簡にはイオンや富士フイルムホールディングス(HD)、アサヒグループHD、アシックス、リコー、積水ハウス、キリンHD、住友林業、TBM、コマニー、東急建設、デジタルグリッド、日本電産、オカムラなど日本企業も名を連ねた。また、イオンの三宅香環境・社会貢献担当責任者は「多くの企業が行動を強化し、気候変動問題の解決に貢献すると決意している。私たちはG20のリーダーにも挑戦を呼びかける」と声明も寄せた。

他にもCOP26を目前に企業の動きが目立つ。NECは26日、産業革命前からの気温上昇を1・5度C未満に抑えることに賛同する世界的な活動に署名した。この活動には900社が賛同しており、COP26にプレッシャーを与えている。

COP26は197カ国の政府代表団が排出削減実績を国同士が取引するルールを議論する。他にも世界の温暖化対策に必要な資金の拠出方法なども話し合い、最終日の11月12日までの合意を目指す。

こうした本来の交渉とは別に議長国・英国は議題を用意している。3日は資金、4日はエネルギー、6日は自然が設定されており、10日の交通の会議では運輸大臣会合が開かれるという情報がある。ただ、確定情報が少なく、日本政府関係者は「どの日も具体的な会議内容は分からない」と打ち明ける。“日替わり会議”はCOPの正式な決議にはならないが「交渉に影響を与える可能性がある」(日本政府関係者)と身構える。

過去にも会議場外の動向が交渉を動かしたことがある。欧米企業トップが開催地のフランス・パリに結集した15年のCOP21が象徴的だ。イケアやユニリーバなどの欧州企業は再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す企業連合「RE100」を結成し、各国首脳に脱炭素を訴えてパリ協定を合意に導いた。17年のCOP23では非政府組織(NGO)が石炭火力発電の廃止を各国政府に迫り、カナダや英国などが脱石炭連盟を発足。現在の“脱・石炭”の潮流を生んだ。

これまで日本企業は気候変動の国際交渉で存在感を示せていなかった。COP26が成果を収めると、日本企業も成功の立役者となれそうだ。

日刊工業新聞2021年10月29日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
「化石賞」を聞いたことがあると思います。日本が受賞して話題になります。その化石賞はCOP会場であっても、交渉外の出来事です。ここ数年のCOPはサイドイベントがニュースになっており、政権がパリ協定から離脱したにもかかわらず米国の民間団体が最大ブースを設営したり、中国が記者会見で本音(?、交渉では絶対に譲らなくても)を発信したりと。今回のCOP26は事前から場外が目立っています。

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