専門職人材を拡充、大日本印刷が人事制度を再構築する狙い
大日本印刷が人事制度の再構築に取り組んでいる。65歳までの選択定年制導入の決定、同一労働・同一賃金に対応した制度改定などに引き続き、第3弾として2021年度からは週の半分以上の在宅勤務・リモートワークを認めたほか、社内複業制度を導入、専門職人材を拡充した。変化する社会全体を視野に入れ、中長期的に価値を創出できる体制作りに努めている。
専門職人材の拡充について佐々木新志労務部長は「第3の創業に向け新しい価値を創出していく上でマネジメント力、高い専門性の両方が必要になる」と狙いを語る。上級社員を対象にした主席研究員・主席企画員の数を増やしたほか、「主席技術員」を追加。さらに、中堅幹部を対象にした「主幹研究員・主幹技術員・主幹企画員」を新設した。
これまでは管理職に就かない限り昇級・昇格しにくいという風潮があった上、専門職自体が上級社員を対象にしたもので、管理職に「課長」はある一方で、専門職にはその対になる職種がなく中堅社員にとっては目指しにくかった。今回の施策でこうした問題を解決し、専門職人材は20人程度から計100人超に増えた。
また、中堅幹部層が自律的に管理職または専門職を選択できる「複線型キャリア制度」も同時に導入。管理職、専門職のどちらのコースを選んでも昇級・昇格で差がつかず、佐々木部長は「専門職として生きていく上でのキャリアパスを描いた」と思いを込める。
大日印は、職務を限定した「ジョブ型」か、限定しない「メンバーシップ型」かという二者択一ではなく、社員の職務と能力の両方の側面で等級を設定するハイブリッドな人事諸制度を基本とする。ただ今後は「上位層に関しては、仕事(ジョブ型)の要素を強くしていきたい」(佐々木部長)という認識。今回の人事制度の刷新は、将来的なジョブ型処遇導入に向けた一つの布石になる。