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ペーパーレス化で主力事業の縮小見込むリコー、カンパニー制導入で危機の脱却なるか

在宅勤務の普及やペーパーレス化の拡大に伴い主力の複合機事業の縮小が見込まれるリコーは、組織体制の抜本的な刷新が必要と判断し4月にカンパニー制を導入した。事業活動領域ごとに分けた五つのビジネスユニットと全体の戦略を立てるグループ本社からなる。各カンパニーに権限を委譲し機動的に事業を展開するとともに、グループ本社が厳格に管理を行う。

商品単位の事業部門と、生産や購買などの機能部門が別々に組織化されていた従来の事業部制と比べ、カンパニー制では責任の所在を明確化。各ビジネスユニットの責任者は自律的に事業運営を行えるようになり「より効果的に手を打つことができる」(松石秀隆コーポレート専務執行役員)。

同社がカンパニー制を導入した背景には、ペーパーレス化によりオフィスでの印刷量減少やトナーなどの消耗品の販売減少が見込まれることへの強い危機感がある。複合機事業一本足の経営から脱却し事業を多角化するためにも、まずは各事業の資本収益性を可視化し、育成すべき事業を明確にすることが重要と判断した。

カンパニー制はこうした狙いを実現するための一つの手段で、同社は投下資本利益率(ROIC)、ポートフォリオマネジメントも同時に導入し、相乗効果を図る。ROIC導入により責任者は複数の事業を客観的に評価し、経営資源を適切に配分できる。ポートフォリオマネジメントでは、責任者は各事業を「成長が見込まれる分野」「構造改革が必要な分野」など仕分けることができ、事業の新陳代謝を高められる。

同社は元々2023年度をめどにカンパニー制の導入を検討していた。ただ、新型コロナウイルス感染拡大に伴いデジタル化へのシフトや在宅勤務の定着など事業環境が激変したため、導入の前倒しに踏み切った。

松石専務は外部にカンパニー制導入を相談すると「普通2―3年かけて準備するもの。1年未満で導入するのは無謀と言われた」と振り返る。カンパニー制により事業構造を転換し、現在柱の一つに据えるオフィスサービス事業含め「大きな柱(事業)を4、5本はほしい」考えだ。

日刊工業新聞2021年9月30日

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