iPS細胞を使った新がん免疫療法の臨床試験が進展した!実用化はいつ?
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の金子新教授と国立がん研究センター東病院の土井俊彦副院長らは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った新たながん免疫療法について、臨床試験の進展を発表した。9月に1例目を投与し、現段階で重大な問題が発生していないことを確認。2024年3月まで計6―18人で安全性を検証する第1相臨床試験を進め、数年中の実用化を目指す。
同治療では他者由来のiPS細胞から作製する。まず、がんに特異的なたんぱく質を認識するキメラ抗原受容体(CAR)をiPS細胞に導入。CARが発現した状態で「自然免疫キラーリンパ球(ILC/NK細胞)」へ分化し、培養して腹腔内に投与する。通常、不特定の細胞に免疫反応を起こすILC/NK細胞が、CARの発現で、がんのたんぱく質だけを標的として認識し、腫瘍細胞を攻撃する。がん以外の細胞の損傷を抑えられるとみられる。
標的たんぱく質が多くなりやすい卵巣明細胞がんを対象に試験を始めた。1週間に1度のペースで最大4回、22日間で投与する。患者によって想定する最小容量と最大容量で試験。反復投与の影響を含めた有害事象発生の割合を中心に安全性を評価し、有効性や免疫学的な評価も行う。
CiRA提供の、多くの日本人に移植しやすい白血球の型のiPS細胞ストックからILC/NK細胞を作るため、実用化後も安定的で迅速に複数の患者へ細胞を供給できる。
日刊工業新聞2021年11月12日