マテハンシステム世界首位、ダイフクの財務戦略
半導体分野改善が持続のカギ
物流機器などマテハンシステムの世界首位、ダイフクの2021年3月期は連結売上高が4739億円と過去最高を更新し、10年前の約3倍に伸ばした。営業利益率は08年のリーマン・ショック後に低迷が続いたが、生産改革など収益改善を図り、ここ数年は9%台を持続する。
「3事業の成長が大きかった」。日比徹也執行役員財経本部長はここ10年の成長要因を分析する。3事業とは、eコマースの追い風を受けた一般製造業・流通業向けシステム、半導体の新工場や増産を背景に活況だったクリーンルーム向け搬送システム、M&A(合併・買収)を駆使し第4の事業柱に育てた空港向けシステムだ。
特に一般製造業・流通業向けシステムは日米を中心に物流施設の自動化などで実績を重ね、営業利益率2ケタで稼ぐ体質を構築。全体の成長を引っ張る。
ただ4月に始動した24年3月期を最終年度とする3カ年の新中期経営計画は、成長率の低さによりアナリスト筋から「保守的」と指摘される。売上高の伸び率は13・94%と前中計の伸び率(17・04%)より低い。営業利益率も10・5%と19年3月期の過去最高値(11・9%)を下回る。
成長には「(半導体向け)クリーンルーム(CR)事業で利益率を回復できるかが最大のポイント」(ゴールドマン・サックス証券の諌山裕一郎マネージング・ディレクター)だ。CR事業は一時、2ケタの営業利益率があったが現在1ケタで推移。最先端半導体向け搬送設備で技術力を蓄積する一方、3年で30%のコスト削減を掲げ利益率改善を狙う。
自己資本比率57・7%(21年3月期)、16年3月期から実質の無借金となり、財務体質は健全。保守・メンテナンスのサービス売上高も1000億円規模と安定収益を得る。今後3年で研究開発費と設備投資を合わせた成長投資は高水準の600億円強を計画。特に「(売上高比率の65%を占める)海外は成長ドライバーで、米国投資も拡充する」(日比執行役員)としており、アフターコロナを見据え中期的視点で取り組んでいく。