事務機器大手が「AI-OCR」活用促進、悩みの「精度問題」は解決なるか
事務機器大手が、人工知能(AI)を用いて手書きの書類や帳票をデータ化する技術「AI―OCR(光学式文字読み取り装置)」の活用を後押しするサービスを相次ぎ発売している。同技術の導入は以前から進んでいたが、大半の場合、精度が100%に到達せず、OCR後の結果を目視で確認するなど前後工程の業務負荷が課題となっていた。各社は新サービス投入で、AI―OCRの運用効率を高め、紙文書からのデジタル化需要を取り込む。(張谷京子)
富士フイルムビジネスイノベーション(BI)は、紙文書の仕分けからOCRによる文字情報の抽出・確認、データ加工、業務システムへの情報登録までの一連のデータ入力業務を一気通貫で行えるサービス「アペオスプラス・デソラ・テクノロジーby AIインサイド」を発売した。OCRを活用する企業は従来、OCR以外の前後工程は人手で行ったり、工程ごとに別のソフトウエアを導入したりしていた。新サービスの活用で、同業務にかかる時間は3分の1に短縮できるという。
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、AI―OCRによる紙帳票のデータ化からOCR後の確認作業までを請け負うBPO(業務受託)サービス「AI OCR×データ入力サービス」の提供を11月1日に始める。
キヤノンITソリューションズが開発したAI―OCRサービスを活用。同サービスで電子データを作成後、熟練のオペレーターが確認作業を行う。従来必須だった顧客による納品データのチェック作業が実質不要になる。
利用者は、請求書や納品書などの紙帳票を複合機でスキャンしたPDF、スマートフォンで撮影したイメージデータをクラウド上にアップロードするだけで、翌日には表計算ソフト「エクセル」やCSVなど編集可能な電子データを受け取ることができる。価格は、最小の月基本料金が3万円(消費税抜き)。中堅・中小企業を中心に訴求し、関連サービスを含めて2023年に年1億円の売上高を目指す。
近年、人手不足や働き方改革の推進による業務改革に加え、デジタル庁の発足や電子帳簿保存法の改正など法整備が進んでおり、紙文書からのデジタル化の需要が急速に高まっている。各社は、紙文書のデジタル化ツールとして活用が進むAI―OCRの運用課題を解決し、紙文書のデジタル化を加速させる。
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