富士フイルムBIやリコーが中小企業のDX支援を強化する狙い
事務機器大手が、中小のデジタル変革(DX)を後押しする動きが広がっている。富士フイルムビジネスイノベーション(BI)は、IT機器の運用を支援するアウトソーシング(外部委託)サービスを展開。リコーは、機器やソフトウエアなどを組み合わせて業種・業務別に現場のDXを促進するサービスの販売本数が4−6月期で1万8000本と前年同期比で倍増した。ペーパーレス化などで複合機の市場縮小が見込まれる中、全国に広がる拠点網を強みに、中小のデジタル化ニーズに商機を見いだす。(張谷京子)
富士フイルムBIが2020年末に発売した「ITあんしんプレミアム」は、パソコンやサーバーなどの機器を同社以外から導入したものも含めて一括で運用・保守する。利用者からの問い合わせに電話や遠隔操作で対応するだけでなく万が一の際には同社のエンジニアが顧客先にすぐに駆けつけることも可能。複合機の保守で培った全国の拠点網を生かす。
同サービスは、アカウント設定など顧客の定常業務も代行する。業務のデジタル化が求められる一方で、IT人材の不足が深刻化。中小では総務部門がIT業務を兼務するなど、担当者の業務負担が課題となっていたことに対応する。
リコーの「スクラムパッケージ」は、製造や建設、医療、運輸などの業種業務別に中小のDXを促進する。同社は同サービスを17年から販売しているが、ニューノーマル(新常態)環境下で高まる業務効率化や生産性向上のニーズを背景に、足元で好調。3月には単月の販売が1万本を超えた。
例えば建設業向けには、スマートフォンやアプリケーション(応用ソフト)などを組み合わせて、工事写真の撮影・管理業務をデジタル化するサービスを展開中。スマホのアプリから工事写真の撮影、写真項目の入力を行うだけで、そのままクラウドに保存、自動仕分けを行える。施工現場の撮影・写真整理業務で従来必要だった、小黒板へ工事情報を記入したり、フォルダに写真を分類したりする手間が省ける。
情報の不足や人材・予算などの制限から情報通信技術(ICT)の利活用が十分に進んでいない中小企業。スクラムパッケージは、そうした中小向けに、業種業務ごとに固有のプロセスをデジタル化し効率化する。