タイヤ大手の業績回復に足かせ。「コンテナ不足」が減益要因に
コンテナ不足が、タイヤ各社の業績回復にの懸念材料になりはじめた。タイヤ需要は旺盛だが、コンテナ不足により市場への製品供給が細るリスクが高まっている。また海上輸送費の高騰も減益要因となりそうだ。材料価格高騰や半導体不足影響といった他のリスクも広がる中、各社は難しいかじ取りを迫られる。(国広伽奈子)
海上輸送費も高騰
国内大手4社の2021年1―6月期は、主力の北米で市販用タイヤなどの販売が好調。通期業績見通しをそろって上方修正した。そこに冷や水を浴びせるのが、北米地域を中心とするコンテナ不足だ。米国ではコロナ禍から経済が急回復しており、タイヤに限らず荷物が急増しているためだ。また各地の感染再拡大で港湾業務が滞りコンテナの回転率が落ちている。
海上輸送費も高騰している。日本海事センター(東京都千代田区)によると、7月の20フィートコンテナ1個あたりの運賃は、中国・上海から米ロサンゼルスへ向かうコンテナ船で前年同月比約3・9倍に上昇。横浜から向かう船は同約4・3倍だった。
北米でのタイヤ需要は強い。市販用を中心に、スポーツ多目的車(SUV)やピックアップトラックに装着する高インチタイヤの販売が好調。トーヨータイヤの清水隆史社長は「アウトドアブームや富裕層の需要がある」と話す。現地の生産を需要の高い製品に集中するが「22年も入荷待ちを抱える状態が続く」(同)見通しだ。
住友ゴム工業もSUV向けタイヤの引き合いが強い。しかし、北米での下期の市販用タイヤ販売本数見通しを、当初計画から引き下げた。同社の山本悟社長は「コンテナ不足が深刻でなければ」と歯がゆさをにじませる。
タイヤ各社にとって北米は売上高や利益に占める割合が高い地域の一つ。タイヤは地産地消が基本だが、現地工場の生産能力増強だけでは旺盛な需要に対応しきれない。
コンテナ不足、海上輸送費の高騰―。これら二つの障害で他地域の工場からの出荷が滞り、北米での販売機会を逃すのは痛手だ。
各社は海上輸送費の高騰については手を打つ。ブリヂストンは「運賃が大幅に増えたとしても欧米の需要は取りに行く」(石橋秀一グローバル最高経営責任者〈CEO〉)とし、輸送網の新規開拓を進める。横浜ゴムも輸送費が上がっても製品供給を最優先する方針。同社の山石昌孝社長は「輸送費など変動費は悪化するが、8―9月には欧米の販売会社の在庫不足を解消できる」と見通す。
このほかタイヤ各社は高付加価値製品の拡販や値上げ、現地生産の強化などでマイナス影響を最小限に抑える構え。下期(7―12月)はコンテナ不足のほかに、天然ゴムなど材料価格高騰の影響も広がる見通し。想定通りに業績を伸ばせるか、手腕が試される。