量子時代の本格幕開けに。“門外不出”の量子コンピューターが日本で実機稼働

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実機を設置したのはドイツに続き2番目「IBM QシステムONE」

米IBMと東京大学は、パートナー契約に基づき、IBMが“門外不出”としてきた量子コンピューターの実機を川崎市幸区の産学交流拠点に設置し、稼働した。東大が創設した「量子イノベーションイニシアティブ(QII)協議会」を産学交流の推進母体として、企業や公的団体、大学と協力して、量子コンピューターの利活用を進める。27日の記念式には、萩生田光一文部科学相、林芳正参議院議員、藤井輝夫東大総長らが出席し、日本における量子時代の本格幕開けを祝福した。(編集委員・斉藤実)

IBMが日本に持ち込んだのは、約3メートル角の立方体の筐体(きょうたい)に、超電導量子回路による制御部や極低温の冷凍装置などをオールインワンで収納した27量子ビットの「IBM QシステムONE(クアンタム・システム・ワン)」。日本IBMが産学連携で利用する「かわさき新産業創造センター(KBIC)」に設置した。

QシステムONEの実機を設置したのはドイツ(6月に設置)に続き2番目。アジアおよび国内では初となる。今回の実機は、東大が占有使用権を持ち、QII協議会に参加するトヨタ自動車やみずほフィナンシャルグループ、JSRなど12社と、東大、慶応義塾大学の2校が活用する。

IBMが米国内に持つ量子コンピューター拠点への遠隔接続による研究で3年超の実績を持つ慶大の産学連携拠点「IBM Qネットワークハブ」はQII協議会に合流し、東大ハブ、慶大ハブとしてそれぞれが活動する。

協議会には三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱ケミカル、日立製作所、東芝、ソニーグループなども名を連ねる。具体的には量子アルゴリズムやアプリケーション(応用ソフト)の開発に加え、「量子ネーティブ」と呼ぶ、人材育成にも力を入れ、日本における量子コンピューターの利活用を加速する。

また、IBMは東大との契約に基づき、東大浅野キャンパス(東京都文京区)には研究開発用の実機を設置し、テストベッド(検証環境)とする。日本の産業界のモノづくり力を生かし、周辺装置の強化などハードウエアとしての完成度を高めるのが目的。QシステムONEを含めて、実機2台を持ち込むのは日本が初めて。

QシステムONEの心臓部となる量子プロセッサーは鳥の名称を持ち、27量子ビットは「ファルコン」。最新版の65量子ビットが「ハミングバード」、年内に発表する127量子ビットは「イーグル」。状況に応じ、新版へと拡張する計画。IBMは2023年には1000量子ビットを目標にしている。

量子コンピューターをめぐっては「将来の覇権を賭けた競争が激化している」(萩生田文科相)。開発競争では米中が火花を散らす中、日本政府も「量子技術イノベーション拠点」の整備などに乗り出している。IBM機の上陸により、量子時代の到来が早まりそうだ。

日刊工業新聞2021年7月28日

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